旅に出るならこの乗り物で

飛行機と、夜行列車と、バスの旅が好きなのです。 飛行機は、飛行機に乗るための手続きが好きなのです。正直言ってしちめんどくさい、しかしそのしちめんどくささが、これから遠くへ旅立つのだという思いを高めてくれるのです。 飛行機が沖留めで、移動タラ…

山手線ホテル

障害対応が長引いて、結局終了したのは深夜2時過ぎ。金曜夜に発覚したのだけがまだ救いだ、タクシーで帰らなくて済むし、徹夜明けの翌日業務も無い。始発を待って帰ることにするか。 夜が明けつつある空を見上げ、大欠伸を一つ、伸びを一つ。今月はなんか忙…

東京駅

東京駅。 玄関口。 華やかで、 賑やかで。 それでも 猥雑ではなく。 ビジネスマンが 観光客が 東京へ出てきた人たちが あるいは夢や希望を抱え あるいは不退転の決意のもと あるいはいつもと変わらぬ日常を送るため ホームへ向かい 改札を目指していく。 日…

コロッケそば

この駅は括りでいうと、新橋とか有楽町とかそのあたりの仲間だと思う(本当にそう思ってる?)。 ただ、有楽町ほどの健全な娯楽が隣接しているわけでなく、かと言って所謂イカガワシイお店の、でぃーぷなところのあるで無し(おー、そういう店が好みなのか)、そ…

爺いの昔話と思って聞いてほしい

秋葉原通いを始めたのは、中学生の頃だったか。ちょうどその頃にマイコンブームっていうのがあってだな。NEC、シャープあたりが色々と製品を出し始めていたのだよ。 どうでもいいことだけどな、昔はマイコンって言ってたんだよ。PCー8001くらいまでかな。そ…

似たような名前が多すぎる

「あ、もしもし? 今どこにいる? あ、俺? 御徒町。黒門町側の出口。で、どこにいるのよ。え? どこだって? うん、地下鉄の。どの線の? ……わからない。御徒町って書いてある。うん。頭に何か付いてない? よくわからないか。えっとさ、どんな電車に乗って…

逃げる

「へえ。話には聞いていたけど、上野大仏ってこんなところにあるんだ」 「ああ、顔だけなんだけどな。ちょっと不思議なものだろう?」 「顔だけ、っていうのはなぁ。でもどこかしら神々しく感じるな」 「仏像なんだけどな」 「で、こんなところに呼び出して…

特異点

「結構な年の差だ、いいか、訳ありな体で行くぞ」 「絶対に、何にもしませんよね?」 「な、……あ、当たり前だ! いいか、これは重要な任務だ。特異点の観測、そう、観測だよ!」 「何をそんなにアタフタしてるんですか。手を出したらどのまま即座に連絡しま…

帰路

日曜日の、そろそろ終電になろうかというこの深い時間の上野行き常磐線快速は、おおよその客をこの日暮里駅で吐き出す。終着まで乗るものはわずかだ。 充実した疲労感とともに、この駅で降りる。月に一度の約束の日。子供たちと会い、遊び、食事をする。たく…

この日の悔恨を糧とせよ

「どこも空いてなかったね」 丸出しの下心をへし折られた男が言う。 「そうねー。仕方ないんじゃない?」 この男に対して、すでに興味がなくなった女が棒読みの言葉を返す。 そう、どこのホテルも満室だったのだ。 ようやく漕ぎ着けた、たぶんイケる(何が)と…

北へ向かう列車

深夜。 私は、田端駅のホームで山手線を待っていた。 この駅の隣には、車輌基地がある。現在は、はやぶさやこまち、つばさなど北へ向かう新幹線が並んでいるのだが。 我が目を疑った。目の前に並ぶのは、昔見慣れた青い車輌。ブルートレインというやつだ。そ…

踏切

山手線でただひとつ残っている踏切。それが田端と駒込の間にある。 私が山手線でその踏切を通りかかるたび、車窓から必ず見かける女性がいた。日本髪を結い、黒の留袖を着たその人は、日傘を品よく掲げて通り過ぎる電車を見つめていた。ああ、美しい女性だな…

染井吉野

「この辺りがさ、ソメイヨシノの発祥の地なんだって。ほら、こんなところに碑がある」 「おお、本当だ。こんな改札を出てすぐ目の前の白山通りを渡ってすぐ、線路脇に目立たずひっそりとあるなんて」 「誰に対する丁寧な説明なんだそれは。まあ実際はこの辺…

詠唱

都電荒川線は緩やかな坂を下りきった、ここ大塚駅前で大きく左に曲がり、山手線の高架に隠れるようにして停まった。そう多くはない降車客と乗り換え客を詰め込み、小さな一両編成は北へと走り出す。 僕は駅前の広場で、それをぼうっと眺めていた。何もやる気…

ミネルヴァに仕える

「池袋ってさ、何かがおかしいんだよね。どこかチグハグなんだよ」 サンシャインシティの地下で買ったブルーシールの紅芋ソフトをせっせと口に運びながら、君が言う。チグハグ。チグハグねぇ。だいたい何を言おうとしてるかは分かる。 「そう、空間の歪みが…

相棒

目白の駅まで来い、って一体なんだってんだよまったく。今日は雨になるっていうからあんまり出かけたくないんだけど。どうしても頼みたいことってなんだよ、そういうのは勿体つけないで先に言ってほしいよな。 改札を出て右手、いつもの待ち合わせ場所にヤツ…

決斗 抄訳

高田馬場駅近くにある、とある雑居ビルに足を踏み入れば途端に、湿気を帯びた熱風と埃っぽさと人熱が支配する異国の街へ迷い込んだような錯覚に陥る。 階を二つ上がり、中程の、商売をやる気があるのかないのか分からないような小さな間口の店に入る。中にい…

チャメ。

まるで外国のような、と言われるのと、まるで異国のような、と言われるのでは受ける印象がいくらか違う。前者にはアングロサクソン的欧米感があり、後者にはラテン的なもの、あるいはもっとエキゾチックな響きを孕んでいる。新大久保は、明らかに後者だ。 韓…

手紙

前略 もう随分とお姿を見かけておりませんが、大事なくされてましょうか。 思えば、新宿で働き始めた、というお話をちらと伺ってから随分と日が経ったように思えます。日が燦燦と降り注ぐ日中であっても、どこかに影を抱えているようなあの街はどこかあなた…

ウグイス

”ウグイスはカナリヤに一目惚れ また会いたいと思っていたら 反対側でまた出会い 束の間並んで 共に飛び となり同士となったとさ でもそれは そこまでのこと カナリヤは アカショウビンに連れられて 離れ離れの泣き別れ ウグイスはただ一羽 また会えるときを…

出られるのか

ホームは人で溢れている。到着する列車から吐き出される人、人、人。それを受け止めるのは、島式ホーム一本だけ。改札口は二つあるにはあるが、どちらも人が掃けていく気配がない。 そして、その真っ只中に、俺はいた。 二進も三進も行かない、とはこのこと…

恋文

婆ちゃんが、渋谷に連れていってくれ、と言っていたので望みを叶えてやろうと準備を始めた。母はやめておけ、と言っている。人混みが何かストレスになってよくないのでは、と思っているようだ。そんなことはないよ、婆ちゃんを信じなきゃ。行きたいって言っ…

街の在り方なんてのを、恵比寿を通して考えてみた、のかもしれないです、か?

恵比寿になんて滅多に来ることはないもんなぁ。一度何かの飲み会で、それもなんだかスカした店だったな、来たくらいで、あとは六本木に行くときに日比谷線に乗り換えるくらいなもんだ。それも大江戸線が出来てからは乗り換えですら立ち寄る事もなくなった。 …

かむろ坂

中古で買った軽自動車のワンボックスに彼女を乗せて、僕は山手通りを南に下っている。商用の軽自動車だからシートはガチガチで、装備も辛うじてラジオがあるくらい。エアコンがついているだけマシ、というものだ。仕方がない、これが一番安かったんだから。…

それ相応の……

「さて、君に対する処罰なのだが」 「……はい」 「君の行なったことは、私に対する明らかな背信であることは認めるね?」 「はい」 「とは言え、それほど悪質なものではない。……近所の電柱に、私を名指しで“お前の母ちゃんでーべそ!”というチラシを貼っただ…

Chase the Ghost

天王洲あたりから、そいつはピタリと着いてきた。自らのマシンの、四気筒の甲高い咆哮の奥に、僅かに、だが確かに単気筒の力強い鼓動が混じって聞こえてくる。 バックミラーに目をやると何も見えない。が、上手く死角に入っているのだろう、時折ゆらゆらと影…

スタンピード

八月の、とある日。 日は燦々と真上から降り注いで影を減らせしめ、アスファルトは陽炎を立ち昇らせる、そんな日。 品川駅港南口を、十数頭の牛たちが駆け抜けた。 インターシティ側から港南口の駅前ロータリーを右に折れ、旧海岸通りへと向かって、一群の黒…

チェリオ オゴレヨ

田町駅から高校まで、だいたい15分くらいかかっただろうか。……なぜ学校ってのは駅前に作らないかな。上に進学するほど最寄駅から遠くなってないか? というのはさておき、だ。田町辺りだと同じ駅を使うのは当時、実質男子校(工業高校である)が1つに我らが共…

失うもの

「本当にここまででいいのか?」 「うん。むしろここまでの方が」 「そういうもんかな」 「そんなものでしょ、今までだってずっと」 「なんだったら展望デッキから飛行機が飛び立つまでいてもいいんだぜ?」 「何言ってんのよもう、あ、ちょっと端に寄って。…

烏森口、三次会、夜

この駅の周りにこれだけ飲み屋があるってことは、この周辺にどれだけの会社があってそこに働く人がいるか、っていうことが、それだけで計り知れるってもんじゃないか。そしてどれだけのサラリーマンが憂さを晴らそうとしているのかってことだよ。 それが証拠…