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はるよこい

はるよこい はるよこい はやくこい あるきはじめた みーちゃんが あかいはなをの じょじょはいて おんもへでたいと まっている という、童謡があります。この歌詞、これと言って不思議なところなんてありません。が、ただ一つ。 「じょじょ」って何だ? とい…

喉を通り過ぎる嫉妬はとてもとても苦くてお砂糖に漬けてしまえば甘美なお菓子に変わるのかしら 了 nina_three_word. Including〈 砂糖漬け 〉の〈 嫉妬 〉

ひがん

此岸と彼岸を隔てるものは洋の東西どちらでも川が流れているものよ西にゃステュクス、東にゃ三途渡し賃なら銭六文よ手甲脚絆の装束設え彼女を迎えに彼岸迄戻ってくれるというのなら反魂香とて試しましょうぞ逢瀬立ち切り彼岸と此岸神や仏のねぇもんだ彼岸に…

埋めちゃえ

今、目の前にある半透明の硝子で出来た楕円球聞けばそれは言霊を記録するカプセルだという ただし 誰が何を 記録したかもわからないという 流れ出る言霊は福音だろうかそれとも災禍だろうか いっそ割ってみたい気もするが 穴掘って埋めちゃえ 了 nina_three_…

宵の明星

それは例えば子どものころ 父との銭湯の帰り途 買ってもらったアイスキャンデーの嘘くさい甘さに満足して 父と見上げた空に輝いていた それは例えば彼女と二人 繋いだ手のほんのわずかな温もりだけを拠りどころに 手放し難くてゆっくりと 彼女を家へ送る道す…

扉、真理

隣人が壁を何度も叩いているのは、さっきからわかっている。でも、その叩く音が状況を悪化させていることを、彼(彼女?)は理解をしていない。その叩く音が、奴らを呼び寄せる一助となっているのを全くわかっちゃいないんだ。奴らを退ければ、僕はこの世界…

Tさん、憤る

朝からTさんに呼び出された。どうしても話したいことがあるんだと。何事かと思っていつもの安ホテル、の向かいの路上カフェへ。Tさんはすでに練乳のばっちり入ったコーヒーを前にして、難しい顔で腕組みをしていた。 どうしたんですか、と尋ねると、今朝、…

Shoe-shine Boy

今日のは、レッドブラウンのウィングチップ。まずは靴紐を一回抜いて、それからシューキーパーを入れて形を整えておく。 ブラシで汚れ落とし。コバの部分を特に念入りに。革本体は後で手入れするからね 固く絞ったウェスで水拭き。このひと手間が大事だと思…

タイトルは無い

「ドイツから養子を迎えた夫婦がな、その迎えた養子に虐待で訴えられたらしい」「なんで」「なんでも食べ物のことでな、こんなものを食べさせるなんてひどすぎる、とかなんとか」「コロッケの代わりにたわしでも出したか」「どこの昼ドラだそれは。そうじゃ…

今宵の、或いは最後の肴

「……明後日付で、第六十二歩兵連隊に召集をされました。明後日早朝の汽車でここを離れます」 少しお酒を召してから、あの人は私の目をじっと見据えてそう言いました。「あなたとこうして会うことも、しばらくはできなくなりますね」「……明日また、いらしてく…

光に包まれて

ホットミルクにチョコレートを溶かしてゆっくり、ゆっくり、時間をかけて体を温かくしていく 今日はなぜか、昔のことを思い出した それは小さい子供の頃同じようにホットミルクをゆっくりと飲んでパパとママにおやすみのキスをしてお気に入りのぬいぐるみを…

神の子孫

「我々第二次調査隊がこの惑星に降り立ってから我々の基準時間でおよそ3週間経過してる。ここまでの状況から言うと、正直なところ調査自体は全くと言っていいほど進展をしていない。 その理由はただ一つ。我々はこの惑星原生の生命体から歓待を受けている。…

遭遇

「先輩、本当に来ますかね」 僕は不安そうに尋ねる。正直、こんな辺鄙な山間の農場に真夜中に連れられてきて、寒風吹きすさぶ中でじっとしているなんて、苦痛でしかない。僕が何か悪いことをしたか? 何かの罰なの? これは。 「今回はかなり有力な情報だか…

桜桃、或いは未練

彼女が別れ話を切り出したのは、どこかちぐはぐなセックスを終えたところで、だった。嫌いになったわけじゃない、あなたより好きな人ができただけなの。どこにでも転がっている台詞だ。 最後だから、もう一度だけしましょう、互いを忘れられなくなるような愛…

インターセプター

えーっと、アルバム「インターセプター」を聴きながら、それぞれの曲についてコメントすればいいんですね。はい、リリースから10周年ていうことで。そうか、もう10年になるんですね。確かに「インターセプター」は、いろいろと重要なアルバムでしたから。み…

生け花

「旦那様。何をしてらっしゃるんですか」「ああ、番頭さんかい。今日は花を生けようかと思ってね」「花、ですか」「そう、花。一輪挿しなんか風流でいいねぇ」「さようですな」「一輪挿しはね、淡い色の花ももちろんいいけどね、濃い、はっきりとした原色な…

決戦兵器

「ようやく完成したので君に真っ先に見てもらおうかと思ってね」「光栄です、博士。最終決戦に向けての人類の英知を誰よりも早く目の当たりにできるとは」「さあ、この奥だ。……ああ、そこに段差がある。気をつけたまえ」「はい。……! これが!」「そう、最終…

可能性

たとえば、あなたに片思いをしている世界 たとえば、あなたが片思いをしている世界 たとえば、あなたと私がどこまでも愛し合っている世界 たとえば、あなたと私がどこまでも憎しみ合っている世界 たとえば、私なんていない世界 たとえば、あなたがいない世界…

知っちゃダメなの

「よーしカット! いい感じだよー」「監督、監督。ちょっと」「なんだ」「ちょっと小道具の方からですね」「なんかあったのか」「あの取り出した銃にサプレッサーつけるじゃないですか」「そうだよ、このドラマ ”知ってはいけない” のな、あそこでこう、スリ…

知ってはいけない

いま、この国は急激な成長を遂げている。残念ながら我が母国のことではない。東南アジアのとある国、その主要都市に俺はいた。抜けるような青空と白く流れる雲。それを徐々に削り取る高層建築物。まさにスカイスクレイパーという奴だ。どの国でもそうだが、…

もう一つの名前

「今日ね、”もたけゆしし”と”わみべつごら”がひゅうが君ちに来てたの」「”わみべつごら”は、”とままをいと”と仲がいいんだけど、”もたけゆしし”とは普通なの」「”とんぎぼしら”は暴れん坊だから、皆に嫌われてるよ」「みんなのお友達はね、”けそ”。”けそ”は…

おでんのかみさま

ぽちゃん。「おっと、うまく取れなかったぃ」「……お前が落としたのは、この大根かな? それともこのこんにゃくかな」「なんだお前は、突然おでん鍋から出てきて藪から棒に」「私は、神だ。それもおでんの神様だ」「そんな中にいて熱くないのかい」「喰いつく…

ピクニック

「今日はこの辺りにしようか」 僕は後をついてくる彼女に声をかける。彼女はただ黙って、小さくうなずく。あまり色気は無いんだけれど、ピクニックシートを敷いて、二人でその上に腰を掛ける。空は青空、最高だ。 僕はお気に入りのツイードのジャケットにハ…

実験

「この惑星にやってきてから、我々が第二世代となる」「この星の自転周期は、約184年、非常にゆっくりとしている」「ここで重要なことを確認しなければならない」「我々の少年時代からゆっくりと暮れていった陽が、2時間ほど前に完全に沈み、これから夜を迎…

30年目のデート

今度の日曜にちょっとドライブに行かないか、と切り出したのは隆の方からだった。そうなった場合にただ一人、家に残る予定の高校生の次男は、あまり関心も持たずにただ、行ってくれば、とだけ返した。まあ、この年頃なら両親が留守のほうが羽を伸ばせていい…

地口の旦那、再び

「あのね、番頭さん」「何でございましょう」「この間の寄り合いでね、ちょっと面白い噂を耳にしたんですけどね」「またしょうもないことを伺ってきたんでございましょう、旦那様」「相変わらずお前は口が悪いね。噂っていうのはね、この世の真理に関わるこ…

地口の旦那

「饅頭は目黒に限る」「のっけから間違えてます、旦那様」「私が本当に怖いものはね、秋刀魚なんだ」「まだ引っ張りますか、旦那様」「隣の部屋にありとあらゆる秋刀魚を取り揃えておいてだな」「豊漁ですな、旦那様」「今度はあっつぅーい海鮮鍋が一杯こわ…

情事のこと

女を抱いているときは大概そうだ。俺を上から見下ろす俺がいる。蛙のような格好で必死に腰を振る自分自身を眺めて、一時の情熱が急速に冷めていくのだ。それに加えて、目の前にある女の、べったりとした赤いルージュを引いた唇が俺の頭の中を一気に冷やした…

質問

「こんな手紙一通から、よくここまでたどり着けたものです。やはりあなたは評判通り優秀だ」「どんな評判か知りませんがね、有難いことです。それが私の財布を太らせてくれればいいんですがね」「確かに、依頼人の増えそうな評判はそんなに流れてませんね」…

鍵の解法

「持つべき者が手を掛ければたちまちのうちにその手中に収まる、か」剣士が誰にともなく呟く。「しかしこいつは岩には刺さってないぜ? ごつい鎖で宙吊りにされてやがる」ナイフを弄びながら、人相の悪い男が言う。「しかしながらこの刀身の文様や形状から、…

海三景

今までに見た海。中でも好きなものを並べてみます。ただし、どれもその時でしか見られなかったものばかりですよ。 1.観音崎から沖合を望む風景 横須賀美術館から観音崎灯台のバス停まで歩いて、横須賀行のバスを待ちながら沖合を眺めた時。明らかにスケー…

書け!

……ええ、そうなんです。ここのところ夜になるたびに、部屋の片隅から不可思議な音が聞こえるんですよ。こう、ペンの軋る音のようなね。 ゆんべなんかは、その正体を確かめてやろうと、こう、ずっと起きてましたらね、出てきましたよ、なんかよくわからないの…

背徳、悦楽

この屋敷の中庭には、プールがある。ただし、中庭へのアクセスはそう簡単ではない。いくつかの部屋を通り過ぎ、からくり仕掛けの扉を抜けて、ようやくたどり着くことができる。つまりは誰にも来てほしくないわけだ。そんなところに、僕は偶然だが辿り着いて…

Japanese Blues

まんま演歌だよな、と思う。繁華街から外れた小さな居酒屋で、今こうしてコップ酒を呷っている自分自身を思うと、可笑しくなってくる。ついさっきまで一緒にいた女、こう呼んでも今日は許してくれるよな、は、さっき逃げるように帰っていった。泣いていたの…

残酷な実学

熱帯雨林を思わせる森の中。道に迷った男が老杉にもたれかかり座っていた。 男の目の前には、一本の胡瓜。疲労困憊、空腹ではあるが、男は悩んでいた。 先刻、何かが男に囁いた。 ”わたしは、さいきん、ゴウ、という、ことば、を、おぼえた” ”ごう、ッテ、ド…

朝起きたら忘れているような

朝食の茶粥を啜りながら、僕は恐る恐る尋ねる。「あの天井に張り付いてるのは何だい」「レッサーパンダですよ。ほら、おなかの所が黒いでしょう」 と、連れが答える。あれ? 顔がぼんやりとして思い出せない。ま、いいか。「ああ、レッサーパンダだよな。で…

昼休み ~休憩~

「子供の頃さ、保育園でも幼稚園でもなんでもいいんだけど」「うん」「おやつが出たでしょ」「ああ、出たね」「あれで好きだったおやつってある?」「好きなおやつか。なんだろうなぁ」「俺はさ、肝油ドロップが好きだったな」「……やっぱりただものじゃない…

マッチを一本、擦る。ぼうっ、と橙色の火が燈る。しばらく眺めて、灰皿に落とす。そしてまた一本、火を燈して、灰皿に落とす。そんなことを、ずうっと続けている。灰皿には、マッチの燃え滓が山のように積まれている。 橙色の灯。ほんの少し、ほんの少しだけ…

焼肉賛歌

焼肉が食べたい。と言うか、モツが食べたいのだ。牛のモツ焼きを食べに行きたいのだ。 タンは塩。あまり厚く切ってはいけない。薄く、芸術的に薄く。それでも残る上質な歯ごたえを恋人との逢瀬のように味わうのだ。逢瀬は檸檬のように酸っぱいものだ。 ハラ…

Hope I, II

Hope I 小さな幸せでいいんだ 僕が、明日も生きていこう、と思えるくらいの 小さな小さな幸せでいいんだ 希望、と呼んでもいい 例えば ホテルに泊まったとき 枕元に置いてある一片のチョコレート そんな小さな幸せ 例えば 昔から傍に居てくれた 幼なじみの女…

No Reason Why

土間の真ん中には、アラジンの石油ストーブが一つ、上にはアルマイトの大ぶりなヤカンが乗ってい、しゅんしゅんと湯気を上げている。 ストーブの上面が出るように真ん中に穴をあけたテーブルがあり、そしてその上にせんべいなどが入った菓子盆と、人数分の湯…

人工無能

Lucy(プロトタイプ)"There is a paper bag." Lucy(第0.5世代)"There is something in this paper bag." Lucy(第0.5世代_日本語パッチ対応)「何かある この紙 中 かばん」 ルーシー(第1世代)「紙のバッグ 中 何か ある」 ルーシー(第2世代)「紙袋に…

裏山の決斗

”小林へ。裏山へ来い。決着をつける” とだけ書かれた手紙を俊平から渡された。僕は内心、めんどくせぇなぁ、と思ってはいるのだが、ここらで決着をつけるのも悪くない、と思い始めていた。 俊平が僕のことをライバル視しているのは知っているんだ。なんでそ…

ベット

「ルールはシンプルです。あなたの45メートル先にある、あの林檎にこのボールを当てれば、それであなたの勝ちです。オッズは1倍。よろしいですね」 ディーラーが告げる。「それでは、ベットしてください」 俺は脇にあったバッグを引き寄せ、口を開けてデ…

切り絵を売る男

四十年ほど前の話。と聞いている。 北へ向かう夜汽車のボックス席。男が二人、向かい合わせで座っていた。片や二十代半ばだろうか。少し派手目の背広だが、ネクタイはしていずに、シャツのボタンは2つほどはだけている。もう片方は歳が掴みづらい。四十半ば…

ゴチソウサマ

日曜日。ちょっと遅めに目を覚まして、キッチンに立つ。彼のワイシャツをちょっと借りた。で、腕まくり。こういうの、一回やってみたかったの。起きてくる前に準備しないとね。 まずは、グレープフルーツ、レモン、オレンジを一個づつ。半分に切って、みんな…

参道にて

とある神社の参道。正月で賑わっている。甘酒や汁粉が振舞われている。 参道の端、人通りの比較的少ないところに娘が立っている。 娘、見るからに人待ちの風体。娘、しきりに時計を気にする。 娘に近づく男女の二人連れ。薄い笑顔の男と、美人だが人好きのし…

円環(3)

後日。 レポートを作成して、一旦クライアントに手渡した。……もうこういった類の仕事は受けたくない、もう嫌だ。なんてことはない興信調査の類が分相応だ。 そんなことを思いながら新聞に目を通していたところ。事務所をノックするものがあった。立っていた…

円環(2)

スキンヘッドたちは、そのまま私の人生に終止符を打たせよう、などと早まった考えをすることはなく、裏通りに面した雑居ビルの一室に私を連行したようだった。もちろん目隠し付きだ、実際にどこなのかは全く分からない。移動した時間もあてにはならない。間…

円環(1)

「君に頼みたいことがある。ある人物を探し出して欲しいのだ」 男は飛び込んで来るなり、こちらの都合など全く知ったことではない、と言わんばかりに一気に要件をまくし立てた。そして更に続けた。「顔写真すら無いし名前も分からん。ただ、スネークチャーマ…