「真景 累ヶ淵」を読む  陸・お久と新吉

主な登場人物 新吉 : 煙草屋の惣吉の甥。豊志賀の若い燕。 久 : 羽生屋の娘。豊志賀の弟子。 甚蔵 : 羽生村の悪党。 豊志賀 : 冨本節の師匠。死亡。 あらすじ 豊志賀の葬儀も済み、新吉は豊志賀への負い目からかあの書き置きのせいか、日があれば墓参を…

多分、粗忽なんじゃないかな、という長屋

「粗忽長屋」、という落語があります。 浅草寺門前に行き倒れがある、というので見物にいった八兵衛、その行き倒れがとなりに住んでる熊にそっくりなので慌てて長屋へとって返し、 「熊、お前が浅草寺の前で行き倒れてるから早く来い!」 と、熊を浅草寺へ連…

「真景 累ヶ淵」を読む  伍・豊志賀

主な登場人物 豊志賀 : 冨本節の師匠。宗悦の長女、お園の姉。 新吉 : 煙草屋の惣吉の甥。その実深見新左衛門の次男。 久 : 羽生屋の娘。豊志賀の弟子。 惣吉 : 煙草屋。新吉を育てる。 三蔵 : 久の叔父。下総国羽生在住。名前だけ登場。 あらすじ 深見…

「真景 累ヶ淵」を読む  四・新五郎捕物

主な登場人物 深見新五郎 : 深見家嫡男。お園を殺し店の金を奪って逃走中。 春 : 荒物屋女将。 金太郎 : 捕者(岡っ引き?)。 あらすじ 故意でないとはいえお園を殺めてしまい、店の金を百両奪って逐電した深海新五郎、剣術の師匠を頼って仙台で身を潜め…

「真景 累ヶ淵」を読む  参・お園と深見新五郎

主な登場人物 深見新五郎 : 深見家嫡男。訳あって下總屋で働く。 お園 : 下總屋女中。皆川宗悦の次女。 下總屋惣兵衛 : 下總屋主人。 三右衛門 : 元深見家下男。 あらすじ 荒んだ深見家が嫌になって逐電をした深見新五郎、元下男の三右衛門のもとに身を…

「真景 累ヶ淵」を読む  弐・新左衛門乱心

主な登場人物 深見新左衛門 : 小普請組の旗本。 新左衛門の奥方 : 深見新左衛門の妻。 深見新五郎 : 深見家嫡男。 深見新吉 : 深見家次男。 お熊 : 女中。 勘蔵 : 門番。 皆川宗悦 : 鍼医者。副業で高利貸。新左衛門に斬り殺された。 あらすじ 宗悦の…

「真景 累ヶ淵」を読む  壱・宗悦殺し

主な登場人物 皆川宗悦 : 鍼医者。副業で高利貸。 志賀 : 皆川宗悦の長女。 園 : 同 次女。 深見新左衛門 : 小普請組の旗本。 新左衛門の奥方 : 深見新左衛門の妻。 三右衛門 : 深見家の下男。 あらすじ 十二月二十日、宗悦は深見新左衛門艇に、元本合…

サンショクスミレ

うん、イメージしていた味とは違う。しょうゆ味のキリッと引き締まったチャーハンを作る予定だったんだが、気がついた時にはウスターソースをかけ回していた。 明らかに失敗なんだが、まあ不味くはない、不味くはないんだ。期待しているものと違うだけだ。 …

「真景 累ヶ淵」を読む  序・「真景 累ヶ淵」について

前書き 先日、三遊亭円朝「真景 累ヶ淵」を読了しました。 読み終えて、人間の業、はたまた因果、因縁といったものに中てられるお話で、しかも一つひとつが独立した話としても成り立ち、それを通して聴く(読む)ことで、この話の全容が見える、といった具合…

AVに望むものという名の性癖の吐露

これから、とってもどうでもいい、かなりえっちぃお話をします。 えっちいのが嫌いな方はすっ飛ばしていただければこれ幸い。予告しましたよ、いいですか、予告しましたからね。 アダルトビデオ、特に最近のアダルトビデオについて、思うところというか要望…

ご理解を

「男性は巨乳が好き」 「貧乳で何が悪い」 的な御意見を散見致しますが、 およそ女性の方々に 勘違いしていただきたくないのは 男は貧乳も巨乳も好きです。 「おっぱい」が好きなのです。 どうぞご理解いただきますよう 宜しくお願いいたします。

「父ちゃん、ぼくは漁師になる」 篠突く雨の通り過ぎた突堤で、海の彼方を見つめて、息子が言う。 「そしてあそこまで行って、でっかい貝を取るんだ。それを食べれば、きっと母ちゃんも元気になるよね」 息子は彼方の沖合を指差す。 空には、通り過ぎた深い…

カオ・パッ・ガパオ・ムー・カイ・ダーオ

会社の近くに新しくタイ料理の店ができたので、-物珍しさもあって、昼時に何度か行ってみた。ガパオライスもパッタイもかなり美味しく、辛いものはしっかりと辛い。値段も安く店の感じも良い。 良いのだが。 店員の中で一人だけ、笑顔もなく、所在無げにして…

処方箋

「……どうしました?」 「あの、昼間眠くて困っているんです」 「ほう」 「仕事場で、あの、昼休みなんですけど」 「昼休みなら別にいいんじゃないですか?」 「いえ、あの、他の会社の方もいらっしゃって、そのお恥ずかしいんですが、……鼾をかいているらしく…

英雄の帰還(改訂)

軌道ハブステーション「ジンベエザメ」航宙管制: 「エウロパ行きJ9003、ゲート3へ。タイタン行きJ621は現在位置で待機を」 「火星行きM805、ゲート1出発位置で待機。M844ゲートアウトします」 「MN001、航路Dを使用してください。MN802、航路Aから侵入を。」…

信心

「なんだね、君のその態度は! “お客様は神様”じゃないのか!」 「そうかもしれないんですが、その」 「その、何だね!」 「“信教の自由”、ってのがありましてね。まあそういうことです」 了

旅に出るならこの乗り物で

飛行機と、夜行列車と、バスの旅が好きなのです。 飛行機は、飛行機に乗るための手続きが好きなのです。正直言ってしちめんどくさい、しかしそのしちめんどくささが、これから遠くへ旅立つのだという思いを高めてくれるのです。 飛行機が沖留めで、移動タラ…

山手線ホテル

障害対応が長引いて、結局終了したのは深夜2時過ぎ。金曜夜に発覚したのだけがまだ救いだ、タクシーで帰らなくて済むし、徹夜明けの翌日業務も無い。始発を待って帰ることにするか。 夜が明けつつある空を見上げ、大欠伸を一つ、伸びを一つ。今月はなんか忙…

東京駅

東京駅。 玄関口。 華やかで、 賑やかで。 それでも 猥雑ではなく。 ビジネスマンが 観光客が 東京へ出てきた人たちが あるいは夢や希望を抱え あるいは不退転の決意のもと あるいはいつもと変わらぬ日常を送るため ホームへ向かい 改札を目指していく。 日…

コロッケそば

この駅は括りでいうと、新橋とか有楽町とかそのあたりの仲間だと思う(本当にそう思ってる?)。 ただ、有楽町ほどの健全な娯楽が隣接しているわけでなく、かと言って所謂イカガワシイお店の、でぃーぷなところのあるで無し(おー、そういう店が好みなのか)、そ…

爺いの昔話と思って聞いてほしい

秋葉原通いを始めたのは、中学生の頃だったか。ちょうどその頃にマイコンブームっていうのがあってだな。NEC、シャープあたりが色々と製品を出し始めていたのだよ。 どうでもいいことだけどな、昔はマイコンって言ってたんだよ。PCー8001くらいまでかな。そ…

似たような名前が多すぎる

「あ、もしもし? 今どこにいる? あ、俺? 御徒町。黒門町側の出口。で、どこにいるのよ。え? どこだって? うん、地下鉄の。どの線の? ……わからない。御徒町って書いてある。うん。頭に何か付いてない? よくわからないか。えっとさ、どんな電車に乗って…

逃げる

「へえ。話には聞いていたけど、上野大仏ってこんなところにあるんだ」 「ああ、顔だけなんだけどな。ちょっと不思議なものだろう?」 「顔だけ、っていうのはなぁ。でもどこかしら神々しく感じるな」 「仏像なんだけどな」 「で、こんなところに呼び出して…

特異点

「結構な年の差だ、いいか、訳ありな体で行くぞ」 「絶対に、何にもしませんよね?」 「な、……あ、当たり前だ! いいか、これは重要な任務だ。特異点の観測、そう、観測だよ!」 「何をそんなにアタフタしてるんですか。手を出したらどのまま即座に連絡しま…

帰路

日曜日の、そろそろ終電になろうかというこの深い時間の上野行き常磐線快速は、おおよその客をこの日暮里駅で吐き出す。終着まで乗るものはわずかだ。 充実した疲労感とともに、この駅で降りる。月に一度の約束の日。子供たちと会い、遊び、食事をする。たく…

この日の悔恨を糧とせよ

「どこも空いてなかったね」 丸出しの下心をへし折られた男が言う。 「そうねー。仕方ないんじゃない?」 この男に対して、すでに興味がなくなった女が棒読みの言葉を返す。 そう、どこのホテルも満室だったのだ。 ようやく漕ぎ着けた、たぶんイケる(何が)と…

北へ向かう列車

深夜。 私は、田端駅のホームで山手線を待っていた。 この駅の隣には、車輌基地がある。現在は、はやぶさやこまち、つばさなど北へ向かう新幹線が並んでいるのだが。 我が目を疑った。目の前に並ぶのは、昔見慣れた青い車輌。ブルートレインというやつだ。そ…

踏切

山手線でただひとつ残っている踏切。それが田端と駒込の間にある。 私が山手線でその踏切を通りかかるたび、車窓から必ず見かける女性がいた。日本髪を結い、黒の留袖を着たその人は、日傘を品よく掲げて通り過ぎる電車を見つめていた。ああ、美しい女性だな…

染井吉野

「この辺りがさ、ソメイヨシノの発祥の地なんだって。ほら、こんなところに碑がある」 「おお、本当だ。こんな改札を出てすぐ目の前の白山通りを渡ってすぐ、線路脇に目立たずひっそりとあるなんて」 「誰に対する丁寧な説明なんだそれは。まあ実際はこの辺…

詠唱

都電荒川線は緩やかな坂を下りきった、ここ大塚駅前で大きく左に曲がり、山手線の高架に隠れるようにして停まった。そう多くはない降車客と乗り換え客を詰め込み、小さな一両編成は北へと走り出す。 僕は駅前の広場で、それをぼうっと眺めていた。何もやる気…