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恋心その3

 その子とは趣味が一緒だった。2人ともアニメが好きで、漫画が好きで、文章を書くのが好きで、話がよく合った。その子は2つ隣のクラスだったけど、休み時間や放課後には同じ趣味の友達数人と廊下で話をしていた。
 僕もその子も、よく話をした。僕がとてもつまらない冗談を言ってその子はそれに付き合って笑ってくれたりくれなかったり。他愛もない話を興味深く聞いてくれたり、僕の知らない世界の話(往々にやおい方面の話だったりするけど)を教えてくれたり。
 そのうち、休み時間になると僕の方からその子の教室へ出向くようになった。僕はまだまだ子供だったから、純粋にその子とたくさん話したい、と思っていた。そんな僕にも、その子は嫌がらずに付き合ってくれていた、多分。今から考えると、周りからは付き合っているようにしか見えなかったんだろう、と思う。
 いや一度だけ。学校帰りに彼女を自分の家に呼んだことがあった。部屋で2人きりになって、僕は。でもそれ以上に大事な友達を失いそうな気がして、なにもできなくて、いつも通りな2人を装って、その子を帰した。翌日からはいつも通りのその子が学校で待っていた。

 卒業まで、そんな関係が続いていった。
 卒業の日、僕たちは笑顔で別れた。

 新しい環境にも慣れてきた3ヶ月くらい後に、僕の胸に穴が空いていた。当然のように話をしていたその子が、当然ながらいない。大事なものを失った。繋ぎとめておかなかった。
 噂では、同じ高校の先輩と付き合っていると聞いた。それを聞いた日は、自分の部屋で天井を見上げて何時間かじっとしていた。いい思い出にするには、1年半くらいかかった。

 

 もうきっと出会うことはないだろうし、もし何時かどこかで会ったとしても、お互いに気付く事はない。それほどに歳月は過ぎた。でも何かの偶然で出会うことがあったら。

 

「きみちゃん、大好きだったんだ」

 

中学の時に言えなかったことを、少し照れながら伝えたい。