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還る

「これから君に、とても重要なことを伝える」
「はあ、重要なこと、ですか」
「いくつかあるので心して聞いておいて欲しい」
「どういったことなんです?」

「まず一つ目。私は地球の人間ではない」
「それ、いまさらですか? 目が一つで足が三本なんてのは地球にゃなかなかいませんよ」
「うん。私もそう思う。むしろ君やその周りの人間がよく私を受け入れたな、と思っている」
「まだあるんですか?」

「二つ目。コーラは瓶入りのが一番美味しい」
「はあ」
「これはとても重要なことだ。ペットボトルのものは明らかにおいしくない」
「そんなもんですか。あんたコーラ好きだったんですね」
「あれはいいものだ。それをあのペットボトルは! プラスチック臭くなってせっかくの風味が台無しだ」
「そりゃあまあ、ペットボトルったって、つまるところプラッチック容器ですからね」
「君は江戸っ子か。プラスチックと言えていないぞ。プ・ラ・ス・チ・ッ・ク」
「なんだい、この地球人よりも地球の言葉がうまい奴は」
「とにかく、ペットボトルのコーラは美味しくない。美味しさは瓶、缶、ペットボトルの順だ」
「違いが判る地球外生命体」
「コーヒーも好きだぞ」
「今時知ってるのはいい歳の人たちだけですよ。てか、あんた幾つだ」
「三つ目」
「都合が悪くて逃げやがったな」

「三つ目。これはかなり重要だ」
「なんです? どうせ禄でもないことでしょうが」
「地球人には、持って生まれた特性というものがある」
「なんかとても当然なことを言われている気がしますが」
「個性、というものではない。個々の人間の能力の伸び具合を司る固有の特性があるんだ」
「……あんた、ポケモンに嵌ってましたっけ?」
「何のことだ?」
個体値、ってやつじゃないんですか、それ」
「なんだそれは」
「こういうのですよ」

http://pokemongo-news.com/gennsen/kotaiti

「……かなり近いな。明確に数値化されているわけじゃないのだがな」

「数値なんて人間の勝手な都合ですよ。

 あたしはこういう生まれた時から決まってるんですぅ、みたいなのは大っ嫌いですけどね」
「そういうものなのか」

「他の人のことは知りませんがね。
 生まれた時から、お前はここまでって言われてるみたいなもんじゃないですか。そんなのは御免だね」

「意外と君は骨っぽいんだな。ちょっと見直した」

「それにね」

「それに?」

「その特性の見方がわかんないんじゃあ、知ってたところで何の役にも立たない」

「それはそうだな。無いのと一緒だ」

 

「他には何か?」
「いや、こんなところだ」
「で、なんだってこんな話をしようと思ったんです?」
「星へ帰ることになった。だから君にだけはいろいろ伝えようと思った」
「コーラの話は要りましたかね」
「一番重要だぞ、あれは」
「あたしはカルピス派なんですけどね。まあどうでもいいや」

「ああ、そうだ。もっと重要なことを伝えておこう」
「本当はスプライトが好きだ、とか」
「この町の外れにある白山神社と八幡様な、」
「なんだ、この神社の名前に詳しい地球外生命体は」
「あの二か所はな、我々が地球侵略を進めるための前線基地だ」
「へ?」
「三十年と経たず、我々は侵攻を開始する。君だけには知っておいてほしかったのだ」

「なんか、さらっと重要なこと言いました?」
白山神社のほうは隠れ蓑にするには都合がよかった。古墳の上に立っているからいろいろと隠すのにちょうどいい」
「なるほどねぇ」
「驚かないのか」
「現実味がなさすぎますよ」
「にわかには信じられないだろうな」
「それにね」
「なんだ?」

「あたしたちゃぁ、三十年も持ってないかもしれませんや。三十年もあれば滅亡寸前まで行くのには十分すぎる時間だ」
「それは私もうすうす気付いていた」
「まあ、お別れって言うんだったらあれです。
 ちょっとそこの自販機まで付き合ってください。コーラ奢りますよ。
 缶ですけど、いいですよね」

 

 

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