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円環(3)

 後日。
 レポートを作成して、一旦クライアントに手渡した。……もうこういった類の仕事は受けたくない、もう嫌だ。なんてことはない興信調査の類が分相応だ。
 そんなことを思いながら新聞に目を通していたところ。事務所をノックするものがあった。立っていたのはクライアントの取締役。
「座らせてもらうよ」

 

「君もすっかり奴らに丸め込まれたようだね。義理の父と言っていたか。違いない」
「奴らが何をしようとしていたかは、正直どうでもよいのだ」
「ただ、私の手元から逃げ出した奴らを許しはしない、ということだよ」

 

 そう言うと、神戸の地方紙をこちらに突き出した。小さな記事だったが、二人の若者の変死体が発見された、とある。あの、西日の差す部屋で会った二人であることに違いはない。
 わたしは、紙面から目を上げるのが怖かった。

 

「恐れるな、君に危害を加える気はないよ」
ウロボロスか、よく言ったものだよ。二匹の蛇が喰い合うとはな!」

 

「私の望むものではなかったが、君の仕事ぶりは悪くはないよ。報酬は、満額ではないにしても満足のいく額を出そう。もちろん経費もすべて請求してくれたまえ」
「それでは、帰る」

 

 表の段差に躓く音が聞こえる。
 だが、冷や汗がまだ止まらない。
 私のやったことが二人の若者の命を縮めてしまったのだろうか。
 目の前にあるすっかり冷めた茶を、一気に飲み干した。

 

 

お題:「人」「物」「場所」

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