焼肉賛歌

 焼肉が食べたい。と言うか、モツが食べたいのだ。牛のモツ焼きを食べに行きたいのだ。

 

 タンは塩。あまり厚く切ってはいけない。薄く、芸術的に薄く。それでも残る上質な歯ごたえを恋人との逢瀬のように味わうのだ。逢瀬は檸檬のように酸っぱいものだ。

 

 ハラミはタレのよく揉み込まれたものに限る。知らない人もいるかと思うが、ハラミは横隔膜なので、分別上正肉ではなくモツになるのだ。ハラミには飯だ。ビビンパでもクッパでもなく、白い飯だ。どんぶりの中の白銀に、僅かながらのタレのシミを存在の証として、白米と共に胃の腑に吸い込まれていくハラミよ。

 

 ミノとホルモンは味噌ダレで。ともにじっくりと火を通し、タンとは違うその野性的な歯応えをしっかりと嚙み締めていただく。ミノはそのまま、ビィルで流し込む。ホルモンはと言えば、ここは白飯、と行きたいところだが、あえてキャベツの千切り。味噌ダレの濃厚な味と、千切りキャベツの淡白な爽やかさ。コラボレーションとかマリアージュとかそんなのはどうでもいい。抜群に合う、ただそれだけなのだ。ちなみにこの千切りキャベツを合わせて食べるのを、川崎スタイルというのだ。あまり馴染みは無いと思うが。

 

 シマチョウよ、ああシマチョウよ! そのこってりとした脂身よ! お前のその脂身はまるで想い続けた人のその柔らかい唇に、初めて触れる口づけにも似て。絡まる互いの舌のように甘くとろけていく。言葉など要らない、ただいつまでもこの官能的なキスを、永遠に。

 

 さあさあ、タン塩ハラミにシマチョウだ。ビィルだ眞露だマッコリだ。自動車なんぞで来てしまっては、酒も飲めない生き地獄。電車だバスだタクシーだ、公共機関を乗り継いで、目指すは焼肉もつ焼き屋。ミノにホルモンカルビ焼き、心ゆくまで喰らいましょう。脂がジワリと溶け出して、ジュウと炎に変わる前、美味しいところを見極めて、さあさあ食べたり食べたり!


了(腹減った……)


お題:「ホルモン」「電車」「キス」

 

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