朝起きたら忘れているような
朝食の茶粥を啜りながら、僕は恐る恐る尋ねる。
「あの天井に張り付いてるのは何だい」
「レッサーパンダですよ。ほら、おなかの所が黒いでしょう」
と、連れが答える。あれ? 顔がぼんやりとして思い出せない。ま、いいか。
「ああ、レッサーパンダだよな。でも天井に張り付けられるのかな」
「あなたは、パンダはすべて白黒だと思っていませんか? これだから……」
なんだかすごい勢いで嘲笑されているのかな、僕は。
「さて、粥もいただきましたので、そろそろ出ましょうか」
表に出て、あれ、いまどこから出たのだろう?
自分の家? どこかのお店? ま、いいか。
ものの3分も歩くと鬱蒼とした雑木林。
「大丈夫、ちゃんとした茶粥ですよ」
ん? なんのことだろう。ちゃんとしてない茶粥ってのがあるのか?
あれ? 一緒にいた連れって誰だっけ?
「今日のデート、楽しかったですよ。それじゃ、また」
うわぁっ、と木の葉が舞い落ちて、狸が走り去っていった。
ああ、デートだったんだよな。
了
お題:「パンダ」「天井」「粥」