質問

「こんな手紙一通から、よくここまでたどり着けたものです。やはりあなたは評判通り優秀だ」
「どんな評判か知りませんがね、有難いことです。それが私の財布を太らせてくれればいいんですがね」
「確かに、依頼人の増えそうな評判はそんなに流れてませんね」
「でしょ? なんでこんなに危ない方面の者ばっかり回ってくるんだか。……とりあえず、手ぇ縛ってる紐、解いちゃくれませんかね。いまさら逃げもしませんよ」
「それはこちらのお話が終わってからですよ。ちょっとした謎々を出します。ただそれだけです」
「謎々? それを解けと」
「いいえ。説いても解かなくても。それは貴方の自由です。ただあなたのクライアントにお伝えいただきたいだけです」
「なぜそんな回りくどいことを? 直接伝えればいいじゃないですか」
「……その通りです。しかしながら、こちらもゲームを仕掛けてみたくなりましてね。あなたが出てくるとなったら、特に」
「買いかぶりすぎですよ。本当は浮気調査が関の山の調査員ですって」
「まあいいでしょう。そうして韜晦なさっていてください」
「これはどうも」
「目の前に缶があるでしょう。エンジンオイルのやつが」
「……ええ、ありますね。これが?」
「その缶の中は、コンクリートで満たしてあります。なんとなく、人の頭くらい入りそうな気がしませんか?」
「(無言)」
「問題その1。クライアントからの、あなたへの依頼は何?」
「……音信不通になっている息子の捜索依頼」
「問題その2。手掛かりは何かあった?」
「手紙が一通。書置き。明らかに誰かに書かされているやつだった」
「ここまでは、事実確認。それでは問題その3」
「ちょっと待ておいまさか」


「その目の前の缶、人の頭くらい入りそうな気がしませんか?」

 



お題:「セメント」「缶」「手紙」

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