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地口の旦那

「饅頭は目黒に限る」
「のっけから間違えてます、旦那様」
「私が本当に怖いものはね、秋刀魚なんだ」
「まだ引っ張りますか、旦那様」
「隣の部屋にありとあらゆる秋刀魚を取り揃えておいてだな」
「豊漁ですな、旦那様」
「今度はあっつぅーい海鮮鍋が一杯こわい」
「そろそろ無理があります、旦那様」
「そこでこの蛇含草をぺろりとひと舐め」
「まだ何も口にしてないですよ、旦那様」
「そうっと覗くと、羽織を着た秋刀魚が座ってた」
「なんですかその陽気な竜宮城は、旦那様」
「……私はね、お前にそうやってポンポン言われる筋合いはないよ。まったく主を何だと思ってるんだい」
「申し訳ないことでございます、旦那様」
「いいかい、私はね、こうやってお前たちを楽しませようとだね、日夜地口や冗談に心血を注いでいるんだ。わかってるのかい?」
「承知しております、旦那様」
「聞く者全てが感涙にむせぶような魂のこもった地口をだね、私は追及しているんだよ。お判りかい?」
「わかっております、旦那様」
「その耳ぃほじりながら人の話を聞くのは止めておくれ! なんだい、馬鹿にしやがって」
「旦那様、あちらから小粋な御新造さんが」
「ぃやさ、お富、久しぶりぃだぁ、なぁあ」
播州屋!」
「うちの屋号で呼ぶんじゃないよ」
「そろそろお店に戻りませんと、旦那様」
「ん? ああそうだね。帰りましょうかねぇ」

 

「ああ、今日も楽しかったねぇ」

「左様ですなぁ、旦那様」

 


お題:「秋刀魚」「魂」「饅頭」

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