インターセプター

 えーっと、アルバム「インターセプター」を聴きながら、それぞれの曲についてコメントすればいいんですね。はい、リリースから10周年ていうことで。そうか、もう10年になるんですね。確かに「インターセプター」は、いろいろと重要なアルバムでしたから。みんなが好き勝手やってましたしね。
 そう、5曲しか入ってないんですよね。ミニアルバムじゃないんだから(笑)。でも全部10分以上の曲なんですけどね。アルバムの長さとしたらまあまあです。みんなこの頃はプログレを志向してました。イエスとかクリムゾンとか。だから曲が長くなっていったんですよね。4,5分で終わる曲が多い今とは比べ物にならない。短い曲は、それはそれで難しいしいいもんですけど。

 1曲目、「白雁」。キャメルのアルバムからインスパイアされたやつです。これはギターの加納君のための曲です。こういう曲で美しい音を出すんですよ。泣きのギターなんだけど、決してブルージーじゃない、っていう。
 ああ、でも今聴くと、加納君、この頃からいろいろ悩んでたんですね。このあたりの音、ちょっと荒れてますもん。葛藤があったんですね。……ひょっとしたらバンド抜けることをこの頃から考えてたのかな。この後すぐでしたからね、辞めるって言ったの。でも、このギターソロ、ほらここの所。今聴いても素晴らしいですよ。こんな綺麗な音で弾ける人、そうはいないですよね。

 次が、2曲目、「ブルーズ」。これね、スタジオで一発録音だったんです。いわゆる「モード」ってやつを試してみたくて、ルートとスケールだけ決めてせーのでインプロヴィゼイション。楽しかったですよ。よくね、タイトルの割にブルース進行じゃない、って言われました。Blues、じゃなくてBruiseの方なんですよ。傷跡、こう、瘡蓋剥した後の薄皮ができてきた、みたいな傷跡のイメージ。ってどんなイメージかわかんないですよね。それこそ加納君がなんでか知らないけど膝すりむいてて、それをそのままタイトルにしたんじゃなかったかな。意味は全然ないんです(笑)。

 3曲目、「インターセプター」。タイトル曲ですね。これはドラムが凄い。杉山君の本領発揮です。フィルの手数の多さとかそっちばっかり当時は話題にされてましたけど、後半のキメのところで、拍がオモテとウラと、コロコロ変わるの気付きました? そう、ここのところ。ここは本当に杉山君天才だと思いましたよ。こっちがついていくのが大変で(笑)。杉山君も入ってすぐで、まだまだひよっこだと思ってたらそれどころじゃないってね。彼は本当に天才でした。あんな事故がなければ、また違ったバンドになってたんでしょうね、うちも。

 4曲目は、えーと何だっけ、「ミスカトニック」か。これは最後まで聴くの、みんな辛かったと思いますよ(笑)。でもメンバーみんなこの曲が好き、っていうんで。前半ずーっと地味ですからね。これは加納君とキーボードの翔がクトゥルフに嵌ってた頃の曲です。タイトル見ればわかると思いますけど。だからメンバーみんなでラヴクラフトの小説とか回し読みしてね(笑)、イメージを統一しよう、って。最終的には、みんなで「いあ、いあ」とか「窓に! 窓に!」とか言い始めてね。なんか変な雰囲気の中で録音した覚えがあります。聞いててもそんな感じ伝わりますよね。

 最後。「ブレード・カシナート」。シンプルに3コードの曲を作ろう、って言ってやってみたらやはり10分越え、ってね。どんだけ長い曲好きなんだ俺ら(笑)。ライブとかでノれる曲が欲しかったんです。みんな小難しい顔して聞く曲ばっかりになっちゃったんで。でも、この曲ライブでやったことないんですよね(笑)。いまいち人気がない。
 曲のタイトルはウィザードリィからです。刀の名前です。でも本当は違うんですよね。クイジナート、でしたっけ。そこの電動の泡だて器だかなんだか。あ、フードプロセッサーか。

 ……いいアルバム作ってましたねー、俺たち(笑)。今でも十分聴けると思います。曲もあまり長く感じさせないし、って自画自賛。またそのうちにこんなアルバム作れたらいいなーって思いますよ、マジで。加納君もよかったら参加してくれないかな。まあ、見ててください。また面白いもの作りますから。

 今日はどうもありがとうございました。



nina_three_word.

Including
〈 がん 〉
〈 葛藤 〉
〈 ひよこ 〉
〈 瘡蓋 〉
〈 泡立て器 〉