お客さまは

「よいですか皆さん、接客業に従事する上では、お客様を第一に考えなくてはなりません。“お客様は神様”、この思いを常に忘れないように。よろしいですか?」

「わかりました。ただ……」

「ただ、なんでしょう?」

「うちは代々、日蓮宗の檀家なんです」

「へ?」

「あ、うちも真言宗豊山派です」

「いやちょっとまって」

「なので、神さまは」

「第一に考えられないですね」

「いやだからそういうことじゃなくてですね」

「私モ、故郷ノ タイ デ、二年間出家シテマシタ!」

「留学生のカオソーイ君まで!」

「南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経……」

「南無大師遍照金剛南無大師遍照金剛……」

「ナーモアムダフット ナーモアムダフット……」

「いやちょっとおやめなさい皆さん」

「アノクタラサンミャクサンボダイ……レインボー、ダッシュせb」

「はいそこレインボーマンに変身しない!」

アジャラモクレン テケレッツノパァ」

「誰ですかどさくさに紛れて死神追い出しているのは!」

 

『南無妙法蓮華経南無大師遍照金剛ナーモアムダフット!』

 

「あああ、休憩! 休憩にします!」

 

 

研修も踊ってみるのである。

 

 了