趣味なんだからいいじゃないのよ
朝八時。
俺は駅のベンチに座っている。
請負先の仕事は先週で契約が解除になった。
同居人には言い出しづらく、仕事に出かけるフリをして今日に至る。
俺は駅のベンチに座っている。
駅のベンチに座って、行き交う女性の脚だけを眺めている。
80デニール。もう夏も近いというのに。
紺のハイソックス。ふくらはぎのちょっと上、学校指定だな。
同じく紺のアンクルソックス。体育会系だ、きっとショートカットで刈り上げだ。
40デニール。2人。キャリーバッグということは、航空会社か。
白のハイソックス。膝下きっちり、ちょっと太め。悪くないシルエットだ。
紺のハイソックス。足首辺りまで弛ませている、短いの履きたいのに。校則が、な。
黒のハイソックス、圧着タイプ。立ち仕事かな。大変だよなぁ。
カラータイツ、ボルドー。50デニールと言ったところか。今日一番のレアキャラ。
電車が到着する。
近所の女子校の生徒たちが満員電車から吐き出されてくる。
チャコールグレーの、学校指定のハイソックスの一群が、
階段へ、エスカレーターへと流れていく。
朝八時。
そう、俺は仕事でもないのに家を出て、
駅のベンチに座り、
趣味の世界に没頭している。
そんなに悪いものでも、ない。
了
キモチワルイ……