映画の街、だがそれはここじゃない
新幹線は東京駅へと滑り込むために、この辺りではかなりゆっくりと走る。有楽町駅のホームで電車を待っていると、その新幹線の中で席を立ち網棚から(もはや“網”ではないのだが)荷物を降ろし、下車する準備をする人たちがよく見えるのだ。
その前を、東海道線が走り抜ける。ちょっと昔なら静岡のみかんとお茶をイメージした、オレンジと緑色に塗り分けられた列車、湘南色というやつだ。……誰だ、カボチャ色とか言ったのは。ちょっと前に出てこい。
ともあれ。
そんな列車たちの向こうに、看板が見えるのだがお気付きだろうか。
有楽町駅のすぐ脇の三角地、果物屋やラーメン屋があるあの場所である。今はパチンコ屋などの普通の看板なのだが、その昔は横に回転する幕になっていたのだ。看板の後ろに今みたいに高い建物もなかったので、晴れた日には青い空にとても映えたのだ。
看板の内容はといえば映画のものであったのだ。すぐそこは日比谷、駅を出れば日劇、映画館には事欠かない。映画の街なのだ、「日比谷と銀座」は。
だけどその映画の街も、徐々に火が消えつつあるのだよな。今や、映画を観に行きましょうなんて誰かを誘うとなると行き先は新宿になってしまうわけで。実際問題、あの日劇が閉館してしまったし。
ちょっと待て。
普通に日比谷や銀座の話をしているけれども。
有楽町の話だよ。
駅前に大きなマルイイトシアが出来たものの、そこだけ行って帰る人もそうはいないだろう。
みんな銀座に行くでしょ?
GinzaSIXとか東急プラザにも行くでしょ?
「有楽町」としての魅力ってなんだろうか。パスポートを受け取りに行くところ、くらいしか思いつかなくないか?
結局日比谷や銀座へ窓口、という位置付けなのか、そうなのか。
なんてことをとりとめもなく考えながら、北海道どさんこプラザで夕張メロンとバニラのミックスソフトクリームをしみじみいただくのであった。
有楽町
(微妙)