チェリオ オゴレヨ

 田町駅から高校まで、だいたい15分くらいかかっただろうか。……なぜ学校ってのは駅前に作らないかな。上に進学するほど最寄駅から遠くなってないか?

 というのはさておき、だ。田町辺りだと同じ駅を使うのは当時、実質男子校(工業高校である)が1つに我らが共学校、あとは女子高が4という具合であった。そのうち実質男子校は駅の反対側に行ってしまうのでここでは除外、となると学校へ向かう途中女子だらけなわけだよ。

 共学に通うとはいえ我らは男子高校生である。こんな恵まれた環境を神に感謝する前に、この学校を選んでちゃんと受かった自分を表彰するべきだ。

 

……などと思っていたのは最初の1ヶ月がいいところで。見えてくるんだよ、現実ってのが。男性としての魅力の標準偏差を下回る者には何にも起きないってこと。一芸に秀でているのならまだしも、押し並べてみんな駄目、詰んだねこりゃ。

  必然似た者同士が寄り集まってくるわけだ。お前は平均以上だろ、って奴でもどこか何かがダメダメで。そんなのが誰を中心とするでなく固まっていく。

 そういうのはだいたい、2派に分かれる。明日こそは、来週こそは、次こそは、と闘志を燃やすヤツ。もういいよ、俺らは俺ら、男子同士で仲良くやろうぜ、ってヤツ。ボクは後者。学校帰りにみんなで途中にある駄菓子屋だかパン屋だか分らないところでチェリオを飲んでバカ話、それがとても楽しいはずだったんだけど。

 

 地元のバイト先で、何という偶然か同じ田町の女子校に通う女の子と一緒になったんだよ。バイト先でちょっとづつ話をするようになってちょっとづつ仲良くなって。朝の電車も気がつけば田町まで一緒に乗って(お陰で学校までダッシュだよ!)。まあ舞い上がったこと。例のダメダメたちの中にいても、ボクはキミたちとは違うんだぜフフン、と心の中で優位に立っていたのだ。今年の夏は一緒に海に行って、お情けだ君達の同道も許そうではないか、水着姿の彼女にドギマギして、夜の花火の時に二人で抜け出して。なんてストーリーがボクの中でもう出来上がっていたりするんだよ。

 うん、ご期待の通り。うまくなんていくわけないんだよ。海に誘ってやんわりと断られて他のバイト仲間からあの子は地元の先輩と付き合ってるよと教えられて夏は終わったんだ。

 

 二学期に入っても、ぼーっとしたまま過ごしていたら、ダメダメたちが満面の笑みを浮かべてボクの周りに集まってきて口々に、

「なあ、昼抜け出して二郎行こうぜ」

「あと、帰りにチェリオ奢れよ」

「それでチャラにしといてやるよ」

 ああ、なんて不器用な奴らなんだ!チェリオか、1人2本までなら奢ってやるさ!

 

 

 

田町