それ相応の……
「さて、君に対する処罰なのだが」
「……はい」
「君の行なったことは、私に対する明らかな背信であることは認めるね?」
「はい」
「とは言え、それほど悪質なものではない。……近所の電柱に、私を名指しで“お前の母ちゃんでーべそ!”というチラシを貼っただけだ」
「……は、はい」
「なにを肩を震わせて笑いをこらえているのかね。これは重大な機密情報の漏洩に当たるのだよ」
「え? (本当だったんだ……)」
「ともあれ、だ。君にはそれ相応の処罰を受けてもらう。……君は、高所恐怖症だったね? それもかなり重度の」
「はい……、まさか、バンジージャンプをやれというのですか? お願いです、それだけは許して下さい!」
「そんな真似はしないよ、安心したまえ。ひとつ、お使いを頼まれてもらいたいんだ。簡単な用事だよ」
「な、何でしょうか?」
「まずは、五反田行きの東急池上線に乗りたまえ。最後尾の車両だ。詳細は追ってメールする」
ーー五反田行きに乗ったかね?
ーーそのまま終点の五反田まで行くのだ。そこで私の部下が君を待っている。
ーー最後尾に乗っているね?
五反田着。
電車から降りるとそこは、ビルで言うと地上4階相当の、吹き曝しのホーム、もちろん覆いなどなく、眼下に大パノラマが開けている。時折吹く風は冷たく、その風はホームをゆらりと揺らす、様な気がする。恐らくは目眩だ。
改札へ急ぐ人々など気にも留めず、その場にへたり込んだ。
部下などいやしない。このホームに降りること、それ自体が処罰だったのだ!
五反田