街の在り方なんてのを、恵比寿を通して考えてみた、のかもしれないです、か?
恵比寿になんて滅多に来ることはないもんなぁ。一度何かの飲み会で、それもなんだかスカした店だったな、来たくらいで、あとは六本木に行くときに日比谷線に乗り換えるくらいなもんだ。それも大江戸線が出来てからは乗り換えですら立ち寄る事もなくなった。
恵比寿って、何があるんですか?ガーデンプレイス? アトレ? 全然思いつかない。
ガーデンプレイスったって入ってる店は別に恵比寿じゃなきゃいけないものでもないし、アトレなんてそれこそそこら中にあるじゃないか。「恵比寿らしいもの」を探してるんだよ、「恵比寿らしいもの」を!
なんかねぇ、外ヅラだけいい街ってイメージしかないんですよ。昔からの店なんかがみんな覆いをかけられたみたいにされて、表っ側にはキレイな商業施設とそのスキマに納まろうとする創作系の料理店と。
だが偏見はいかんよ偏見は。行ってみれば何かしらあるかもしれないじゃないか。自分の目を信じろ、見る前に跳べ、知行合一、陽明学。最後の方は何か違う。取り敢えずは現地踏査だ。
で、会社帰りに恵比寿まで来てみた。地下鉄日比谷線の階段を上がって目に入るのは、アトレの三階まで貫く長いエスカレーター。とりあえずは乗せられてみる。
いろいろお店が並んでいるんだが、なんかどれもどっかで見たことあるなぁ。君んところは亀戸の甘味屋さんだろ、あなたは日本橋の高級水菓子店だ、五桁の金額の果物とか正気ですか。うん、やはり望む感じのものではないか。
下に降りて、車通りの多い道(都道?)を歩く。さすが駅前、店が多い。ってさ、◯◯家系ラーメンて、どこでもあるなぁ。まあそもそも恵比寿まで来て◯◯家系ってどうなんですかね。その昔、恵比寿ラーメンっていう名店があったけど今どうなんだろう? まだあるの? 今日はちょと探す元気もないけど。
ちょっと裏の通りに入ってみる。仕事上がりのスーツ姿と小ざっぱりしたオネエ様方が、ワイングラス片手に談笑をする立ち飲み屋が点々と続く。
バル、バル。バル、バル、バルバルバルバルゥゥゥゥゥ!
お前らバオーか! ビースススティンガーフェメノンとかできるのか!
なんだこの "どこにあってもいい街" は。
などと勝手に落胆をしながらもう一本奥の路地へ。いきなり現れたのは、ちょっとお洒落なホテル。入り口には、「宿泊」と「休憩」の料金がデカデカと。それが二、三件続いている。
これだ。こういうことだよ。
その先には大衆的な寿司屋がある。その二階には、「ファッションヘルス」のド派手な看板が。
そうだよ、そういうことだよ。
外っ面の綺麗なところと、欲望や不浄を受け止める泥沼のようなところ。その二つが共存する、人が生きている街こそがいい街ではないか。あのシンガポールでさえ、あらゆる欲望を受け止める一画があるんだ。どっちかに偏ってしまうと、街は途端に魅力を失う。
と思っているんだが。だってさ、みんなう◯こするだろ? そんなときに家の中にトイレが無いと不便だろ? トイレにゃトイレの役割ってもんがあるだろ?
ここに来て、やっと恵比寿の「表情」を見た気がした。それはまるで恵比寿像の如く。表に繕われた「恵比寿」と、影へと追いやられた「蛭子」と。 よし、機嫌よく帰ることにしよう。
恵比寿