2018-11-03 虹 「父ちゃん、ぼくは漁師になる」 篠突く雨の通り過ぎた突堤で、海の彼方を見つめて、息子が言う。 「そしてあそこまで行って、でっかい貝を取るんだ。それを食べれば、きっと母ちゃんも元気になるよね」 息子は彼方の沖合を指差す。 空には、通り過ぎた深い灰色の雲を背に、虹が架かる。 私は息子を強く抱きしめ、これほどまでに優しく育ってくれたことに感謝をする。 だが息子よ。 おそらく君が考えているのはハマグリだろう。 ハマグリが吐くのは蜃気楼だ。 虹じゃない。 了