「真景 累ヶ淵」を読む  参・お園と深見新五郎

主な登場人物

  • 深見新五郎   : 深見家嫡男。訳あって下總屋で働く。
  • お園      : 下總屋女中。皆川宗悦の次女。
  • 下總屋惣兵衛  : 下總屋主人。
  • 三右衛門    : 元深見家下男。

あらすじ

 荒んだ深見家が嫌になって逐電をした深見新五郎、元下男の三右衛門のもとに身を寄せていたがn田舎暮らしにも飽きて江戸へ戻ると深見家は改易、父母も非業の死を迎えたことに世を儚み墓前で切腹をしようとしたところを、通りかかった下總屋惣兵衛に拾われ、そこで働き始める。

 惣兵衛の店、下總屋にはお園という娘が住み込みの女中として働いていた。このお園、新五郎の父深見新左衛門が斬り殺した皆川宗悦の次女。それとは知らず心惹かれる新五郎、お園が風邪をひいたとなると毎日のように看病に通う始末。お園はお園で理由が分からぬがその気はなく、むしろ避けていく。

 或る日新五郎は、これできっぱりとあきらめるからとお園に頼み込んで、一晩だけ添い寝をする。お園は背を向けたまま。

 新五郎、結局その夜のことが忘れられず。幾日後、店の修繕のために積んであった藁の所にお園を待ち伏せ、想いを遂げようとする。嫌がりもがくお園。力づくで抑え込む新五郎。押し倒した先に、藁を切る押切が。お園は押し倒される度に押切でざくざくと背を斬られ、やがてこと切れる。

 動かなくなったお園を見て新五郎は混乱、店から百両の金を奪って仙台のに移り住んだ剣術の師匠を頼ってまたも逐電する。

 

雑談

 ここでは怨念ではなく、因縁のお話となります。宗悦を斬り殺した深見新左衛門の嫡男新五郎が、其れとは知らず宗悦の娘お園に恋慕する。お園は父の仇の息子と知らぬも、理由も分からず新五郎を毛嫌いする。

 それが結局、図らずもお園を殺してしまう、という悲劇を招く。宗悦殺しと同じく、深見家の者が宗悦の血筋のものを殺す。因縁、です。

 

 結局、男は未練たらしい、というのがここでのお話ですが。

 

 お話の中に出てくる”押切”というのは、紙を裁断するときのアレなんですが、最初はあれで背中をざくりと切る、といのがちょっと分からなかった。取っ手を握って指でも置いておけばそりゃあすとんと落ちるだろうけど、背中を押し付けても深く傷になるもんじゃないだろうと。

 農家に生まれたうちの母に聞いたら正体がわかりました。藁をザクザクと切るためのものなんで、上下両方とも刃物になっているものだそうです。そりゃあ押し付ければ深く斬れますね。

 新五郎は何とかお園をものにしようとしてますから無理やり力ずくで何度も圧しつける。お園もたまったもんじゃあないです。

 

 さて江戸から逐電した新五郎、次回はその後のお話となります。

 ……まとめちゃってもよかったんですが、一回に死ぬのは一人にしておきたいかな、と。