私を形作る音楽、そのアルバム10選 その1


 フォーク、ロック、ジャズ、はあまり聴かないか、果てはタイのポップスまで。
 私の耳から鼓膜や蝸牛管を経て大脳まで、音楽に漬かっている、というのは絶対に大袈裟ですが、まあそんな気概でいたいなとは思っています。

 そこで、皆さんには大変にお節介な話ですが、今まで聴いてきた中で、私にとってのコーナーストーン、そして転機になったアルバムなどを10枚ほど紹介させていただきたいと思う次第です。

 長えよ! という声が何となく聞こえてきますが、自分でもそう思っています。
 本当に長くなってしまったので、運が良ければ2回くらいに分けていこうと思います。今回はその第1回目です。

 よかったら、お付き合いください。


1.
Wednesday Morning, 3 A.M. / Simon & Garfunkel
 私が本格的に洋楽、というか英語で歌った曲に触れた最初のアルバム。
 実際に好きになったのは「Scarborough Fair」だったのだけれど、アルバムは「Sound Of Silence」が入っているもので、且つアコースティックバージョン(ていうかこれがそもそものアレンジなんだけど)のあるアルバムにした。
 これを聴いてハーモニーっていいな、と思った。だけどコーラスには進まなかったな。きっとどんなにハーモニーが美しくても、好きでもない歌を歌わされるのが嫌だったんだと思う。
 しかしこの頃から私は、Simon & Garfunkelを除いて、洋楽よりもクラシック音楽、とりわけ交響楽に嵌っていくのだ。ある意味、のちの好みへの伏線、と言えなくもない。


2.
Escape / Journey
 所謂"ロック"に初めて触れたアルバム。
 中2の後半に、ちょっとした反抗期を迎えた。もともと「Fighting 80's」というライヴ番組に影響を受けていて、今でいうインディーズに近いようなバンドなんかを好んで聴くようになっていた。なので今でもThe MODSのファンであったりする。
 もちろんLP盤などちょくちょく買えるわけがなく、もっぱらレンタルレコード屋に通っては良さそうなところを借りて、カセットテープに録音するのだ(今ではやっちゃだめだよ!)。
 その中で、やはりここは洋楽でも何か違うものを選ぼうじゃないか、ということで、その時の人気筋を2枚借りてきた。
 1枚は、TOTOの「TOTO IV」、そしてもう1枚が、Journeyの「Escape」だ。今考えれば、がちがちの産業ロックだ、何所がインディーズ系だ、っていうものだが、それは35年前の私に言ってくれ。なけなしの小遣いで借りるんだ、失敗はできない。
 「TOTO IV」のほうは、やっていることが大人過ぎて正直中2の私には退屈であった。中学生にAORを理解しろ、ってのがそもそも無理な話だ。
 翻ってJourneyのほうは、バカでかい音のギター、そのくせ美しいメロディ、とりわけ、Art Garfunkelとは全く違った、パワーに満ちたSteve Perryのハイトーンボーカルにやられたのだった。この時点でクソガキは、洋楽のロック、すげぇ! となってしまったのだ。
 比喩ではなく、いや若干は盛っているが、「Escape」を録音したテープを、擦り切れるほど聴いた。


3.
Made In Japan / Deep Purple
 ハードロックとの遭遇。"Highway Star"がファーストコンタクトなので本来は「Machene Head」だけど、アルバムとして買ったのはこっちだった。
 高校に入って、何か自分を変えようと努力をした形跡がある。その一環として、フォークソング部なるものに入った。
 "ギター弾けると、モテるんじゃね?" という、凡百の日陰キャラが思いつきそうな理由だ、92パーセントくらいは。
 ただ問題は、いや全く問題ではないか、そこに集まった野郎どもはみんなヘヴィメタル好きだったってことだ。まずはバンドが組まれた。流されるように私もそのバンドにいて、歌わされた。Journeyに嵌ったお陰か、Journeyの曲の1音したくらいまでなら何とかなったからだ。後はファルセットで誤魔化せた。
 皆知っていると思うが、ハードロック/ヘヴィメタルを始めようとするバンドは、ギタリストの意向でほぼ間違いなくDeep Purpleに行く。うちのバンドもご他聞に漏れず、持ちネタが「Highway Star」になった。
 さて「Highway Star」とはどんな曲じゃい、と聴いてみたら、まあJourneyと比べてなんと荒々しいこと! ギターだけじゃなく他の音までデカい。時折、"ゴキャーーン!"などと不思議な音が入る(リバーブを蹴っ飛ばしている音だと後に知った)。ボーカルなんぞスティーヴ・ペリーの美しいハイトーンから比べりゃ金切り声だ。
 だが何か、未だに続く反抗心のようなものに火が付いたのは確かだ。そして私は、ハードロック/ヘヴィメタルに傾倒を始めるのだ。
 それでも並行してマイケル・ジャクソンやプリンスも聴いてたけどね。


4.
Rio / Duran Duran
 MTVの洗礼。パステルカラーとエキゾチックな風景が美しかった。
 上記の通り、ハードロック/ヘヴィメタルに、私は傾倒をしていった。そして同時期、だったと思う、音楽業界というものに一大革命が起きていた。

 

「MTV」の登場である。

 

 音楽に映像が付いた。言ってしまえばただそれだけなのかもしれない。ただそれだけで、音楽はよりキャッチーになり、魅力を増した。
 ミュージシャンが演奏をする姿を見ることができた。曲に合わせたイメージが一緒に届けられた。美男美女が歌う姿を見ることができた。今となっては当然のことだが、これは相当に画期的なことだったのだ。私たちが見ることができたのは、せいぜい音楽番組でのスタジオライヴくらいなものだったのだから。
 それと同時に台頭してきた音楽のジャンルがあった。

ニューロマンティック」と言う。

 見目麗しき美男美女がどこかアンニュイでメロウだったり、とてもキャッチーなロックを演奏する。そしてそれらのイメージをMTVから発信する。ある意味、MTVと完全に親和したジャンルであった。
 正直演奏は、取り立てて上手くはないものが多かった。本物の音楽好き(って、誰?)ならば、ものすごい批判の対象としているところだろう。だが、良いのだ。美しい映像はそれらの難を隠す。むしろ映像と併せてこの曲は完成するのでは、とすら思うのだ。
 中でも、Duran Duranの「Rio」からのシングルカットされた数々の曲は、そのパステル調の色合い、インドネシア、タイなどでロケをしたエキゾチックな映像で、私の心を鷲掴みにした。そしてハードロック/ヘヴィメタルにただひたすら傾倒しようとする私を、細い糸で、音楽を俯瞰できる位置に繋いでくれていたのかもしれない。


続きはまた今度(本当に書くんだろうな)。