私を形作る音楽、そのアルバム10選 ラスト

 ようやく10枚目までこぎつけました。

 最後の2枚は邦楽で締めます。

 10枚目については……、賛否ありそうですが、敢えて。

 

 

9

夢供養 / さだまさし
初期さだまさしの大傑作。とにかく聴いてほしい1枚。

 

 「ゆめくよう」です、「むきょうよう」ではないのでお気をつけください。
 この当時の彼の曲に対する評価である、暗さが全体を通して覆っています。
 しかしながらこの暗さで毛嫌いをしては、このアルバムの本質、素晴らしさに気付けないのです。
 唐八景という童歌、ですかね、で幕を開けるこのアルバムはとにかく、使われる言葉が美しい。その美しい言葉で綴られるドラマティックな物語。仰々しい、とも言えますが。「療養所(サナトリウム)」での認知症の進みはじめているであろう、誰も見舞いに来ない孤独な老婆や「空蝉」での、駅の待合室できっと都会から迎えに来るはずの息子(でもきっと彼は来ない)を待つ老夫などの、孤独な老人たちに向けられる視点の曲などには、Simon&Garfunkel のアルバム、「Bookends」を意識されたところもあるのかな、と愚考致します。
 ただ暗いだけでなく、「パンプキン・パイとシナモンティー」のような独自のメルヘンチックな舞台で展開される物語や、「木根川橋」のような、こち亀的ノスタルジィ(発表の時期的にはこっちのほうが先だと思います)に溢れた暖かい曲もあるのですよ。
 そしてこのアルバムの白眉、「まほろば」。奈良は馬酔木の森を舞台とした男女の心のすれ違いをしたためた歌。万葉集からの引用、「黒髪に霜の降るまで」待つ、なんていう言葉をはじめとして、言葉の選び方がいちいち美しい。ぜひ聴いてほしい一曲です。

 日本語使いとしてのさだまさし、その凄みとある種の恐ろしさを感じてほしい1枚です。

 

 

10

十七才の地図 / 尾崎豊
敢えて、敢えて最後に選びましょう。

 

 尾崎豊を評する言葉は、今であればぴったりな言葉があるでしょう。
厨二病をこじらせた」
 これです。ここで言うのは、世間に対する反抗という、多くの人が一度は抱えるであろうものですが。その反抗心の行き場を素直に詞にしたためただけだと思うんです。
 だから、
 分かってもらおうとかそういうことじゃない気がするんですね。そう、「15の夜」のことを言っています。
 そしてそれよりも。彼の世の中に対する観察眼こそが素晴らしいと思うのですね。アルバムタイトルの「十七才の地図」なんか、最高だと思います。あれをそれこそ十七才で書いた才能はもうちょっと認められていいんじゃないでしょうか。
あまりに叩かれてちょっと悲しいので。3枚目のアルバムはいいですよー。

 

 

以上、10枚のアルバムを4階に分けてご紹介しました。少しだけでも気になるものがあって、実際に聴いていただける機会があるといいなぁ、などと思っています。

 

それでは、良い音楽を。