飾り窓

「もうここで長いこと働いているのか」
「そうね、あなたが思うより長いと思うわ。私、若く見られるから」
「ふうん」
「本当はこんな仕事、とっととやめたいけど」
「鉢植えなんか飾ったりして、それじゃなかなか出ていけないだろう」
「商売道具が殺風景なのは嫌だから。文字通り、窓を飾るの」
「他のところは薄暗い照明くらいなものだものな」
「でしょ? ちょっとでも明るくしたいから。そうじゃないと、滅入っちゃう
 薄暗いだけのところで愛想笑いを浮かべるの、なんか嫌なのよね」
「君は結構変わってるよな。こういう商売の人とは思えない」
「私の本当の姿が見えてないだけかもよ」
「でも、あれだけ情熱的に相手をしてくれる人はこの界隈じゃいない」
「ありがと。ね、私と契約しない?」
「契約? 愛人の?」
「うーん、ちょっと似てるかな。……どちらかというと、約束に近いかも」
「何か難しいこと?」
「それほどでもないの。お使いをしてほしいだけ」
「何かを買ってくるのか?」
「ちょっとものを取ってきてほしいの。ここの地下収納にあるものを一つだけ」
「それくらいなら、大丈夫そうだ。で、報酬は何?」
「一晩お相手してあげる券を3枚」
「なんだ、それ」
「お得だと思うわよ」
「まあね、じゃ行ってくるか」
「待って。契約の証としてこれを」
「お酒か?」
「そう、蜂蜜酒。制約の魔法をかけてあるから。甘くて飲みやすいわよ」
「おっかないな。君は魔女だったのか」
「ちょっと違う。私はものに何かを宿せるだけ」
「……確かに甘いな。悪くない味だ」
「お気に召したようでよかった。口には甘いけど、お腹に苦いから」
「じゃ、行ってくるか」
「お願い」

 

「今日のはどうだった?」

「そう、あまり美味しくはなかったの」

「体格はよかったけど、脂ばっかりだったんだ」

「逃げ出そうとはしなかったでしょ? ちゃんと制約をしておいたから」

「うん。精液は姉さんがちゃんと取っておいたから。いつもの所に撒いて」

「今日はお掃除手伝ってあげられないからね、ちゃんとやっておいてね」

「食べ残しはいつものようにちゃんと埋めておくのよ」

「そう、洗剤で床を洗ったら、漂白剤で綺麗にしておいてね」

「大丈夫。お姉さんに任せれば何も心配ないからね。愛してるわ」

 

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