決戦兵器

「ようやく完成したので君に真っ先に見てもらおうかと思ってね」
「光栄です、博士。最終決戦に向けての人類の英知を誰よりも早く目の当たりにできるとは」
「さあ、この奥だ。……ああ、そこに段差がある。気をつけたまえ」
「はい。……! これが!」
「そう、最終決戦用人型兵器”リセ”だ」
「”リセ”、ですか」
「どうした、何をそんなに気のない声を出す」
「いえ、方向性がちょっとわからなくなったもので」
「何がどうわからないというのだね」
「いやあの、人型なのはわかるんですが、……なぜセーラー服風なんですか?」
「趣味だ」
「趣味」
「そう、趣味」


「このスカートみたいなのもそうなんですか」
「これは実用も兼ねておる。推進用のバーニアの保護と追加装甲としての役割を持っておる」
「プリーツ、要りましたか?」
「気に入らんなら、フレアスカート風にもできるぞ」
「(そういう問題じゃないんだけどな)」
「何か言ったか?」
「いえ、別に」

 

「この人型兵器はな、搭乗者の呼吸、脈拍、脳波、筋肉の微動、そういったものを連動させることで動くのだ」
「つまり、動作について思考したとおりに動きをトレースするということですか」
「そう、考えた通りに動く。その思考とのリンクをより確実なものとするために、専用のユニホームを用意した」
「どんなものですか……なんとなく想像はつくけど」
「いま私が白衣の下に着ているものがそうだ」
「これはッ! 黒の全身タイツ?! しかも胸に矢印(↓)!」
「さらにミニスカート風のヒラヒラもついておる」
「これもやはり……」
「趣味だ」
「趣味」
「そう、趣味」

 

「博士」
「なんだね」
「これ、やはり私が乗るんですか」
「もちろんだ」
「このユニホームを着て?」
「そのとおり」
「……どうしても、ですかぁ?」
「泣くな泣くな。君のその美貌に合わせてデザインしたものばかりだ。着て似合わんことはない」
「センスが古すぎなんですよぉー」
「大丈夫だ。10年もすればファッションは一周してくる。それを待とう」
「これから最終決戦だって言ったじゃないですかぁ」
「それを乗り越えれば、その先30年だろうと50年だろうと続けることができるではないか。だから、勝とう」

 


nina_three_word.

Including
〈 呼吸 〉
〈 プリーツスカート 〉