名もなき詩人より伝承された詩編(断片)

むかしむかし、その昔
砂漠の中のとある国
王様突然こう言った

 

「急いで御殿を建てなさい
 愛しい姫の住まう家」

 

みるみる御殿は出来上がる
王様とても上機嫌
姫は喜ぶ素振りだが
寝床で臥せっているばかり
王様さらにこう言った

 

「御殿を華麗に飾りなさい
 愛しい姫に相応しく」

 

みるみる御殿は飾られて
王様さらに上機嫌
姫様日に日にやせ細り
まだまだ臥せっているばかり
王様おろおろし始めた

 

ある日姫様旅立った
遠いお国へ旅立った

 

王様とっても悲しんで
とこしえ姫を住まわせた
華麗な御殿に住まわせた
王様最後にこう言った

 

「御殿に像を納めなさい
 愛しい姫の生き写し」

 

なかなか像は仕上がらず
王様とても不機嫌で
ようやく満足いく像が
御殿に置かれたその時に
隣の国が攻めてきた

 

王様の国は疲れてた

 

王様自ら進み出て
民の命を乞うたとさ
私は死んでも構わぬと
財産のなにもいらないと
ただ一つだけ望むのは
私の骸を姫の隣に
横たえてくれればそれでよい
最愛の姫の隣でずっと
眠れるならばそれでよい

 

御殿の飾りは奪われて
そのうち御殿もなくなって
小さな庵のその中に
姫様生き写しの像が一つ
二人の墓の枕元
凛と立っていましたとさ

 

その立ち姿は神々しく
新しい国の主でさえも
引き倒すのをためらった
意地の汚い盗人さえも
持ち去ることをためらった



nina_three_word.

Including
〈 最愛 〉
〈 神々しい 〉