まじっくすぱいす

「……青年、そこの青年よ」

「はい、なんです?」

「見たところ悩み事があるようだな」

「わかりますか、実は私は料理人を目指しているんですが」

「ふむ」

「どうにもセンスがないらしくて……」

「センスとな」

「ええ。包丁などの技術は他の人たちより優れてるという自負はあるのですが、肝心の味覚のセンスが凡庸なようで」

「うむ、やはり君だったのだな」

「どういうことですか?」

「私はな、料理の神から遣わされたものだ……、コラコラ無言で立ち去ろうとするんじゃない」

「すいませんね、うちは浄土真宗なんで神様はちょっと」

「まあ話だけ聞いていけ。実はな、あらゆる食材を美味にする奇跡の調味料というものがある」

「へぇ、そうなんですか?」

「信用してないな。ほれ、ここにある」

「……これがそうなんです? 結構な量ですね」

「まあな。 実はもう一つあるのだ。 全部で二本。 これを君に授けよう」

「ずいぶん太っ腹ですね。 あとで請求書とか来ませんよね」

「そんなことはない。 その代わり次回からは僅かだが代金をいただく」

「テレビショッピングみたいですね」

「まあそうだな。 でもこれを使えば君の料理を食べた誰もがその美味さを讃えることだろう。どのような食材でも、な」

「まあタダだっていうなら貰いますよ。 ありがとうございます」

「また必要になったら呼んでくれ。それではな」

 

「ああいなくなっちゃった。さてと、そんな魔法みたいな調味料あるんだねぇ。どんなもんだか味見をしてむるか」

 

ふたをあけてぺろりひと舐め。

 

「……、カレー粉じゃねぇか!!」

 

 

ちゃんちゃん