ミネルヴァに仕える

「池袋ってさ、何かがおかしいんだよね。どこかチグハグなんだよ」

サンシャインシティの地下で買ったブルーシールの紅芋ソフトをせっせと口に運びながら、君が言う。チグハグ。チグハグねぇ。だいたい何を言おうとしてるかは分かる。

「そう、空間の歪みが顕著じゃないか、ここ池袋は。なんで東に……」

「東に西武で西に東武があるんだ、だろ。アイス溶けるぞ」

「で、その理由はわかってるんだよ」

君は滴れかかった紅芋ソフトを舌ですくい上げる。ありがとうくらい言ったらどうだ、おい。

「この地を司る女神が石に変えられてしまっているからな。ほら、待ち合わせ場所にあるだろう」

ああ、『いけふくろう』な。ちょっと訂正をしたほうがいいな。あれは女神じゃなくてフクロウだし、もし女神の使い魔のことを言っているなら、それはフクロウじゃなくてミミズクだ。あれ、そうだったけ? ちょっと自信はない。まあそれはどうでもいいか。

「どうだ、二人で女神を解放しないか? そうなれば我々は英雄だ、夢があると思わないか?」

あーあーあー、もう手がベタベタじゃないか。女神を解放する前に洗面所で手を洗ってこよう、な?

「よし、それでは行くぞ。付いてきな」

はいよ。どこまでも付いていきますよ。

「……手を繋いで行くぞ、悪い奴らに付け込まれないようにな」

手、ベタベタだよ? なんでそんなに満面の笑みで手を差し出すかな。……そうだね。手を繋いで行こうか。

 

 

池袋