「真景 累ヶ淵」を読む  八・新吉の改心、そして鎌

主な登場人物

  • 新吉    : お久を殺した。甚蔵に世話になっている。
  • 土手の甚蔵 : 羽生村の悪党。
  • 累     : 三蔵の妹。
  • 三蔵    : 質屋の主人。お久の叔父。
  • お久    : 江戸から新吉と逃げてきたが、新吉に殺される。

 

あらすじ

 お久の死体が上がり、それを叔父の三蔵が引き取り葬儀を済ませる。新吉もその話を聞き、墓のある法蔵寺へとお参りに行き、これからはここでお久の菩提を弔い生きていこうと決意をする。

 そこへ三蔵の妹累が下女を連れて墓参に来る。一目見て累は新造に悪しからぬ感情を持つ。

 

 その頃、甚蔵が、質屋の三蔵を訪ねる。例の鎌を見せて、取っ手にある三の焼き印はお前のところの鎌だろう、これがお久の殺された辺りに落ちていた、黙っていてやるから二十両寄越せ、と三蔵を強請り、金二十両をせしめる。

 

 そんなとき、累は鉄瓶をひっくり返して顔に大火傷を負ってしまう。奇しくもそれは、豊志賀と同じ箇所であった。

 

 

雑記

 永らく空きました、申し訳ありません。

 ここからが、第2章の始まりです。新吉は甚蔵のところへ食客と言うか居候のように留まることに。

  お久の死体は、叔父の三蔵が引き取り、回向をいたします。この三蔵、父親の代からの質屋を継いでその二代目、先代の三右衛門は金二十両を元手に質屋を始めた、と。 

 皆さん、覚えてますか? 皆川宗悦を殺めた深見新左衛門が、金二十両をやって亡骸の処分を頼んだ小間使いを。秋葉の原に宗悦の亡骸が入った籠をおっ放って国許へ逃げちゃった人を。

 そう、その三右衛門なんです。三蔵は、その息子なんです。ここでまた、登場人物の糸が一本繋がりました。

 

 話を新吉に戻します。

 お久が三蔵のところで弔われたと知って、新吉は在郷の者に菩提寺を聞き、墓参に向かいます。三蔵のところへ直接聞きに行けなかったのは、バレていないだろうとはいえ自分がお久を殺したから、でしょう。

 新吉は、これからここでお久の菩提を弔って生きていこう、と改心をします。いままででわかる通り、新吉は弱い人間です。優柔不断です。その場で感じた弱気に流されます。

 こういうのは母性本能をくすぐるのかなんなのか、得てしてモテます。しかも色白の優男。たまたま墓参に来たお久と所縁のあるお嬢様と出会します。このお嬢様も江戸へ長く奉公に出ていて、土地の言葉に馴染めないらしく。

 そんなところに繁みから蛇が現れる。飛び退くお嬢様、それをしっかり支える新吉。みつめあう目と目、そりゃあお前、たんめ(以下略

 そして降りだした雨の中、寺で番傘を借りてお嬢様をお屋敷、三蔵のところまでお送りする。お嬢様は日に日に想いが募る。恋の病、というやつですね。

 

 そんなある日お屋敷に、土手の甚蔵が訪ねてくる。なんでも三蔵に質入れもらいたいものがあると。出てきたのは、鎌が一本。これで二十両貸してもらいたい。まあ甚蔵のことなんで返す気なんて全く無いでしょうが。

 この近在の農家なら何処にでもあるような鎌に二十両を出せというのはいくらなんでも無理だ。当然ですね。

 ここで甚蔵の講釈が始まります。

 この鎌の柄のところに三蔵さんのところの持ち物である印の焼き印がある。

 この間、お久さんが殺された日に、俺はその現場を見ちまった、そしてその時この鎌を拾った。殺した奴の顔は残念ながら見ちゃあいない。

 だがそんなことはそんなに重要じゃない、人殺しの現場に三蔵さんの鎌が落ちていた、お久の亡骸を引き取って弔ってやったのも、なにか見られちゃ困る証拠でもあったんじゃないか、俺はそう言いふらして歩いてもなにも構いやしない。

 なぁ二十両、出す気になったかい。

 

 真犯人を知りながらこの恐喝、クズと呼ぶに相応しい。ね、だんだん胸くそ悪い話になってきたでしょ?

 真実かどうかは問題じゃなくて、悪い評判が立つ方が商売には怖い。やむを得ず甚蔵に返る宛の無い金二十両を貸す三蔵。

 そんなことがあったなどとは露知らず、墓で一目惚れした新吉に恋い焦がれる三蔵の妹、お累。そんなところに、家の中に出てくるには大きい蛇が目の前をよぎる。驚いて飛び退くお累。部屋を飛び出し駆け出す、囲炉裏に躓く、囲炉裏には煮立った湯を湛えた鉄瓶が。

  お累は顔の左半分に大火傷を負ってしまいます。そう、豊志賀の痣と同じ箇所です。呪いはまだまだ続いています。

 

 

 今回は状況説明ばかり、あらすじの焼き直しになってしましました。

 次回は、どこまでですかね、この先、このお話のイベントがかなり詰まっております。そうさ、大きなイベントが3つくらいあります。

 行けそうなとこまで行きましょう。

 

 あんまり間を開けずに書きます。