私を形作る音楽、そのアルバム10選 その2

アルバム紹介その2、なんですが。

そこそこ気合い入れて書いたら2曲分だけになりました。許して。

 

それでは。

 


5
Operation: Mindcrime / Queensrÿche
ようこそ、コンセプトアルバムの世界へ!

 私がヘヴィメタル/ハードロックに傾倒を始めたことは先に述べた。そして1986年頃にはあらゆる『メタル』と呼ばれる音楽が溢れていた。
 特にLAを中心とした、比較的華やかな格好、カーリーなロングヘアーで天辺は短めという髪型に材質はなんであれスキニーなタイツ、という人たち、ヘアーメタルと後に呼ばれる人たちが溢れ返っていた。
 NWOBHM※は影を潜め、その一部はスラッシュ・メタルとなって世に湧き出しつつあった。ドイツ・北欧から様式美に溢れたジャーマンメタルと呼ばれる勢力もやって来た。

 そして音楽を記録するメディアとして、CDとLP盤のシェアが拮抗、そして逆転をしようとしていた頃だ。
 アルバム自体は未だ、LP盤における、A面B面を念頭に置いた、それぞれ20分20分、大体40分ちょっとの曲の配置を意識しているものがほとんどであった。しかしながらCDには74分の録音が可能だ(カラヤンが、第九が云々はここでは置いておく)。

 これに対して、40分という枠を取っ払い、60分を越える曲を入れてたっていいんじゃね? というバンドが現れ始めた。Def Lepperdの「Hysteria」がはじめであったと記憶している。


 枷は外れた。そこにはおよそ30分の、未踏の広野が待っていた。
 Def Leppardが曲を詰め込んだその隙間を使って、Queensrÿcheは曲と同時に「物語」を放り込んできた。さらには、「A/B面とか、あんまり意識しなくていいんじゃね?」となってきた。その流れに先鞭をつけた。
 カルト、と呼ぶには勢力の増した教団の指導者ドクター.Xと、その下で非合法活動に手を染める主人公のジャンキー、ドクターXに仕えるシスターメアリーの織り成す物語。活動の中(要は暗殺なのだが)、次第にメアリーに心を寄せるようになっていく主人公。しかしドクターXが指示した次の仕事は、「シスター・メアリー」を始末することだった……。
 という話が、60分強の時間を使って語られていく。バンドのボーカル、ジェフ・テイトの声がハイトーンから低音までを行き来し、物語を紡いでいく。この時代のヘヴィメタルアルバムとしては、かなりの完成度であるといっていい。

 

 正直、このアルバムより前にも、コンセプトアルバムは山ほどあった。The WHOの「Tommy」、「四重人格」。Styxの「パラダイス・シアター」、Pink Floydの「The Wall」、エトセトラエトセトラえとせとらレコード。所謂プログレには山ほど溢れている。
 だが敢えて。
「CDというメディアの使い方」を転換させたハシリとして、このアルバムを称えたい。実はまだちょっとLPカットを意識しているんだけれどもね。

 

NWOBHM
 当時の流行であったパンクの過激な衝動に対して、既に古臭い、と烙印を押された、しかしながら演奏の技巧は非常に高いハードロック勢が、パンクのその文法を取り込みながら、新たなヘヴィメタル/ハードロック、ニューウェイヴ・オブ・ブリティッシュヘヴィメタル(NWOBHM )というムーヴメントが起きたのです。

 


6
Larks' Tongues in Aspic / King Crimson
それは、知ってはいけない世界だったのかもしれない。

 LPレコードに針を下ろす、でもCDプレイヤーの再生ボタンを押す、でもなんでもいい。
 静かに、静かに。パーカッションの音が響き始める。無秩序にしか聞こえない。そうあらゆる種類の風鈴が一斉に鳴っているような無秩序さ。その無秩序をシンバルの均一な音が覆い隠し、バイオリンとベース、そしてギターの規律が支配していく。激しく、火花を散らしながら回り続ける歯車のように。
 そしてこのアルバムは幕を開ける。

 どう聞いても好き勝手に演奏している。そう、好き勝手に演奏しているのだ、高度な秩序と卓越した技術を以て!

 初めて聞いたとき、この時点で私の魂はほぼ抜けた。何が起きているのだ、このアルバムは、と。そもそも『雲雀の舌のゼリー寄せ』ってなんだ。

 そしてアルバムの後半。
 静かに、確実に押し寄せるリズムの嵐。リズムの暴風に合わせ押し寄せるインプロヴィゼーション
 リズム、インプロヴィゼーションインプロヴィゼーション、リズム。
 またか、また「コレ」が来るのか。
 それぞれが重なり合い、絶頂を迎え悲鳴を上げる。
 そして、灼熱の秩序が耳を支配する。変拍子の秩序、構成の秩序。計算された無秩序。
 しかし、総体として美しいとさえ感じる。そうだ、すでに頭は混乱している、いやむしろ洗脳されているのかもしれない。
 曲がクライマックスを迎え、糸を引くような余韻が去って行くと、はたと気が付くのだ。
 私の頭は混乱していないし、ましてや洗脳もされていない。

『これは素晴らしい音楽なのだ』!

 そう、多くの人はこうしてプログレッシブ・ロックの沼に嵌っていくのであろう。
 だがこのアルバムは静かに嵌っていく沼ではない。底なし沼のど真ん中、岸まで数百メートルはあろうかというところにっ突き落とされる。その感覚を味わえる。
 もう、抜けられないぞ。

 

 今回は2枚紹介しました。

 ここまで見渡して、……普通ですねぇ。

 次回あたりから、ちょっと変なのが出始めるかもしれませんのでお楽しみを。

 うふふふふ。