要石の祟り

 村の肝煎、金五郎が鎮守様の要石を動かした。

 鎮守様の要石だけは触れちゃなんねぇ、祟りがあんぞ、って

 村のものは言い合ったけんども

 そったら迷信、俺ぁ信じねえっていって

 ご神木の二ツ杉の根元まで動かした

 そら、何にも起きねかったべぇ、と、金五郎は胸を張った

 

 確かに何にも起きなかった

 この集落には何にも起きなかった

 今の今まで何も変わらず

 あたりの集落から取り残されたように

 昔のまんまの暮らしをした

 

 新しいことなどが入ってきても

 なぜか村には根付かずに

 近在の集落が近代化していくのを横目で見ながら

 昔ながらの百姓仕事で

 なんも変わらねぇ毎日を送ってた

 

 いいことなのか悪いことなのかはわからねぇ、けんが

 あの時からこの集落の時は止まっちまった

 たぶんこれが要石の祟りなんだべな