銀の大地における盛衰の物語

0.未踏の大地

 はじめに、円い銀色の大地があった。何一つ穢れることの無い、銀に輝く網の大地であった。


1.霜降和牛の統治

 穢れなき大地にまず降り立ったのは、その身に白き霜を纏いし和牛肉であった。少数ではあるが威厳のあるその姿にて、銀の大地を大きく汚すことなく平和の裡に統治した。


2.上タン塩の独立

 霜降和牛に遅れることわずか、銀の大地の片隅に上タン塩がその領地を主張した。霜降和牛は争いを好まず、譲り合いの下に上タン塩にその領地を割譲した。上タン塩も、大きく銀の大地を汚すことなく、程よく統治した。


3.カルビ・ハラミの台頭

 霜降和牛と上タン塩の統治はほどなく下火となる。彼らは個体としての繁殖力が強くはなかったためである。
 代わって勢力を増し始めたのが、カルビとハラミである。彼らは霜降和牛や上タン塩の立ち退いた隙間に入り込み、着実にその勢力を伸ばしていった。彼らはまたその性質から、銀の大地にしがみ付き、炭を残し、またカルビなどはその地を炎で焼いた。

 

4.焼き野菜の蹂躙

 カルビ、ハラミもまた、霜降和牛や上タン塩ほどではないもののその繁殖力は高いものではなかった。勢力を伸ばした土地もほどなく空き始め、わずかな隙を突くようにして、その土地に勢力を伸ばそうとする者たちが現れた。玉ねぎ、ピーマン、人参、玉蜀黍。そして椎茸としめじ。焼き野菜たちである。
 彼らは、カルビやハラミよりもはるかに長く銀の大地に留まることができたので、次第にその領土を蹂躙していった。気が付いたころには、カルビ・ハラミはわずかな領地を残すのみとなっていた。そしてその覇権は永く続くものと思われた。


5.ロースの復権

 焼き野菜たちの世は、神の手によって緩やかな終焉を迎えた。彼らは銀の大地の端へと追いやられ、あるものはその身を焦がし、またあるものはそっと忘れ去られていった。
 代わって銀の大地を占有せしめたのは、カルビの血統にあたるロースである。彼らはカルビほどに荒ぶることはなく、この地を統治せしめた。しかしながらやはりカルビの性質を持ち合わせてい、銀の大地にしがみ付き、わずかながらも炭で汚した。


6.ホルモン連合軍

 辺境より、新たな勢力がやってきた。ミノ、シマチョウ、レバを代表とするホルモン連合軍である。彼らは上タン塩やハラミと租を共にするものであった。
 また彼らは荒ぶるものでもあった。ホルモンたちの纏いし辛味噌ダレは、銀の大地に纏わりつき、より暗き炭となって台地を浸食した。そしてそして銀の大地はホルモンたちに蹂躙され、清き銀の大地は失われたかに思えた。


7.兵どもが夢の跡

 神は銀の大地に住まわるすべてのものたちを、他の地へ移住為さしめた。有無を言わさずに、である。
 そして、新たな神が現れた。その神は、穢れてしまった大地を根こそぎ取り去り、穢れのない新たな銀の大地を与えた。
 そしてまた、新たな興亡の物語が紡がれていくのである。神々がその腹を満たすまで。