たべる

 僕らはすべてが真っ白な部屋に通され、そして少し離れて向かい合わせに座った。
 僕の前には、よく熟したイチジクが、彼女の前には大きなサイズの、茹でたホワイトアスパラガス運ばれてきた。

 

 僕はイチジクを二つに裂いて、しゃぶりついた。柔らかな甘みと溢れる果汁が僕の喉を潤す。僕はただ、イチジクを食べるという行為に高揚をしていた。

 

 彼女はよく茹でて柔らかくなったホワイトアスパラガスを手に取り、穂先から口に含んだ。咀嚼する必要もないほど柔らかくなったそれを、おそらくは舌の付け根ですりつぶし食道へと送り込む。その度に喉がなまめかしく動くのが見えた。そして次第に頬が紅潮していったのだ。

 

 僕は彼女を見つめ、彼女は僕を上目遣いに見上げた。互いに笑みは必要なかった。