2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

坂道

黄昏時。 僕は坂をゆっくりと上っていた。 向かいから、黒の留袖を着た老婆が下ってきた。 すれ違いざまに互いに小さく会釈でもしたろうか。 誰か葬式でもあるのだろうか、 ここに来るまでそのような家はなかった。 あの老婆は、どこへ行くのだろうか。 僕は…

歴史になるというのはこういうことかもしれない

今日、東大生と高校生が競うクイズ番組を見ていたら、トキワ荘マンガミュージアムについての問題があったんです。この問題については高校生の方が回答をして、その回答についての解説を、自らしていました。実はちょっとここのところで違和感を感じてしまっ…

スピードボートが停まったのだ

バックパッカーでほぼ満席となった、この国境を越えるスピードボートは、終着の港を前に大河の中央で停止した。そして行き交う小船の引き波に揺られ、およそ2時間30分が経過した。 携帯電話が鳴る。私の到着を待っている、彼女からの連絡だ。 今どこにいる?…

Wildflowers

家のベルが鳴って扉を開けたらお隣の、幼なじみの君が着飾って立っていたこれからパーティーへお出かけでぼくも落ち着かないスーツ姿で君を出迎えた 普段の君とは全く違う赤いドレス、片口の大きく開いたドレス輝くストッキングに赤いエナメルのハイヒール一…

小さな祠

僕の家から小学校へ向かう途中、みつかばあさん家の曲がり角を左に曲がったすぐ先に、古ぼけた小さな祠があった。こんもりとした雑木林に囲われたそれは、例えば通学の朝であっても、日のカンカンと照り付ける真夏でさえも、そこだけは暗く近寄り難いものだ…