【お知らせ】暫しお休みします

いつもこのカストリ話をご贔屓にしていただき、ありがとうございます。 この度、身の程知らずにも、文学フリマに出展する運びとなりました。 元来私は、あちらもこちらも、などと器用に渡っていけるものでもなく。暫しそちらに注力をさせていただきたく、5月…

「ええ、このところね、陽気もずいぶんとあったかくなってね。こんな時はね、ちょっと一杯ひっかけていきたくなりますね、ええ、ええ。一杯ひっかけるったってね、威勢のいい旦那の煮売屋なんかはいけませんよ、もっとこうね、色っぽい年増のお店でね。ワイ…

渇望

その日、若者と俺は首都高速羽田入り口の近くのコンビニにいた。暖かい缶コーヒーを互いに一本づつ。その熱でかじかんだ指に再び血が通う。それを飲み干したらスタートだ。 キーを捻りセルボタンを押すと、スターターが悲鳴のような音を上げる。ワンテンポ遅…

なんでもない一日

「はい、起きて。私これからお仕事」 この部屋のあるじ、ミイホァが俺をベッドから追い出す。仕方ないなぁと呟き、のっそりと部屋から出ていく。階段へ向かう途中で、恰幅のいい外人(俺は外人じゃないのか? 外人の定義ってなんだ?)と、目も合わせずにす…

オーダー

四つ目の十字路を右へ折れてすぐに、その喫茶店はある。朝のひと時をゆっくりと過ごすとき、またじっくりと思索にふけるときなどに使わせてもらっている。 少し渋くなっているドアを押し開けると、からんころんと決して涼やかとは言えない音が俺を店に招き入…

たべる

僕らはすべてが真っ白な部屋に通され、そして少し離れて向かい合わせに座った。 僕の前には、よく熟したイチジクが、彼女の前には大きなサイズの、茹でたホワイトアスパラガス運ばれてきた。 僕はイチジクを二つに裂いて、しゃぶりついた。柔らかな甘みと溢…

惑星なのか?

「この最下層は、どうなっているのですか?」 航宙ハブステーション”ソードフィッシュ”から、この惑星の陸地、と呼んでいいものかどうか、を見下ろして、案内をしてくれている管制官に尋ねた。 眼下の景色は、高層建築が隙間なくびっしりと林立し、それぞれ…

四月になれば彼女は

四月。 春の匂いを纏って、彼女はやって来た。 こんにちは、こんにちは。ご機嫌はいかが? そう尋ねる彼女に戸惑いながらも、その妖しげな魅力に僕は少しづつ魅かれていった。気が付けば僕は彼女に恋をしていた。 五月。 僕らは一緒に住むことになった。 気…

またも雑談

さてもまた、音楽なんぞ聴きながら雑談をしようかと思う。本日は、私のカラオケでの十八番が題材になるので、まあそんなつもりで読んでください。 今かかっているのが、四人囃子の「空と雲」。間奏が長いのだけれども、この曲が好きでよく歌わせてもらってい…

浩文

その男が訪ねてきたのは、一週間前のことだった。 男はこんな田舎の集落では珍しく、濃い鼠色の背広に身を包んでいる。こちらに、浩文、というものがいるはずだが、と尋ねてきた。 いや我が家に浩文という名前のものはいない、お訪ね先を間違っているのでは…

もしもロックが嫌いなら

失敗した。 この間の見合いは、断る気満々だった。だったんだが、お相手を一目見てときめいた。俺には不釣り合いなほどの清楚な女性。でもまあ、まさかの目は無いな。だから、ここぞとばかり色々話を盛った。 ”読書はどのようなものを?” ”ええ、志賀直哉や…

波止場の決闘

「いいか、お互い恨みっこなしだ」「勿論だ。生き残った方がシマをすべて貰う」「ああ、あの世で泣き言いうんじゃねぇぞ」「こっちの台詞だ、マヌケ」 この二人のボスは、古式ゆかしい決闘に、この島の利権を委ねることにした。 島の西側を治める、でっぷり…

要石の祟り

村の肝煎、金五郎が鎮守様の要石を動かした。 鎮守様の要石だけは触れちゃなんねぇ、祟りがあんぞ、って 村のものは言い合ったけんども そったら迷信、俺ぁ信じねえっていって ご神木の二ツ杉の根元まで動かした そら、何にも起きねかったべぇ、と、金五郎は…

雑談なんてものを、ひとつ

寝付けなくなってしまったので、こんなものを書いている。iPodからはヴィヴァルディの「四季」が流れてきている。イ・ムジチ合奏団、それもフェリックス・アーヨの頃だ。「四季」は、冬の第二楽章が良い。暖炉の前に座り、団欒の時を過ごす、そんな情景が浮…

あのメロディ

※このお話は、RKBラジオの 東山彰良 イッツ・オンリー・ロックンロール│RKBラジオ に投稿した作品に加筆をしたものです。 「店長、オ客サン、アンマリ来マセンネ」 アルバイトで留学生のカマル君が言う。「あと三日で閉めちゃうからね、このコンビニ」 私は投…

出なかった同窓会、その後の話

以前書いたが、私は同窓会に出なかった。顔を見たくもない奴らがいるからだ。そのことは後悔していない。 なぜ私が同窓会に出たくないのか - hyakuganとふっとさんのカストリ読物 後悔していないはずだった。 後日街中で、同級生に会った。そのときに言われ…

トンカツ特区

数年前に、安全無菌な豚肉というのが出回り始めた。 その豚肉を使った、中がまだピンク色をしたミディアムトンカツが爆発的に流行った。 そして我が国の流行は、より極端になっていくのが常である。火の通り加減がよりレアなものになっていった。 次に始まる…

スモモの木

叔父の家の、裏の畑に二本のスモモの木があった その木から取れるスモモはとても甘く、爽やかに酸っぱかった そして、叔父と叔母はとても仲良く、畑仕事に精を出していた ある年、片方のスモモの木にいつもよりたくさんのいつもより甘い実がなった その年に…

坂道

黄昏時。 僕は坂をゆっくりと上っていた。 向かいから、黒の留袖を着た老婆が下ってきた。 すれ違いざまに互いに小さく会釈でもしたろうか。 誰か葬式でもあるのだろうか、 ここに来るまでそのような家はなかった。 あの老婆は、どこへ行くのだろうか。 僕は…

歴史になるというのはこういうことかもしれない

今日、東大生と高校生が競うクイズ番組を見ていたら、トキワ荘マンガミュージアムについての問題があったんです。この問題については高校生の方が回答をして、その回答についての解説を、自らしていました。実はちょっとここのところで違和感を感じてしまっ…

スピードボートが停まったのだ

バックパッカーでほぼ満席となった、この国境を越えるスピードボートは、終着の港を前に大河の中央で停止した。そして行き交う小船の引き波に揺られ、およそ2時間30分が経過した。 携帯電話が鳴る。私の到着を待っている、彼女からの連絡だ。 今どこにいる?…

Wildflowers

家のベルが鳴って扉を開けたらお隣の、幼なじみの君が着飾って立っていたこれからパーティーへお出かけでぼくも落ち着かないスーツ姿で君を出迎えた 普段の君とは全く違う赤いドレス、片口の大きく開いたドレス輝くストッキングに赤いエナメルのハイヒール一…

小さな祠

僕の家から小学校へ向かう途中、みつかばあさん家の曲がり角を左に曲がったすぐ先に、古ぼけた小さな祠があった。こんもりとした雑木林に囲われたそれは、例えば通学の朝であっても、日のカンカンと照り付ける真夏でさえも、そこだけは暗く近寄り難いものだ…

PowerShellからHyper-Vの仮想環境を、どうこうするのです。

ちょっと考えればわかることなんですが、メモ代わりに書きます。 Hyper-V上に構築した仮想環境は、Powershellからコマンドを発行することで、以下のことができます。 起動(Start-VM [仮想環境名]):電源ONに相当 シャットダウン(Stop-VM [仮想環境名]):…

信仰の始まりというものは

ラスベガスからの帰り、荒野の上空を飛ぶ飛行機。 見たいものと驚きの充足感と、 嫌な日常に戻る憂鬱さを抱え、その飛行機の中にいる。 そのとき 窓の外を眺めた時に見えた、機影を囲む虹。 ブロッケン現象、単なる科学的現象、 科学的現象だと分かっている…

選択

さて、どうしようかと考えている。 上手くいかない人生を呪ってヤケ酒を喰らい、いつしか深酒となり、終電を逃した深夜、知らぬ街で道に迷ってしまった。 迷った道の突き当り、三差路となった何所とも知らぬ分岐点に、黒づくめのスーツを着て、黒い帽子をか…

不貞の精算

「うん、私は平気だから。気にしてなんかいないよ」 隣に腰掛けている彼女は、僕の方を見ずにそう言った。 つい先日、浮気相手がうちに乗り込んできた。僕の留守を狙って。その日家に帰ると、彼女は感情もなく淡々と、僕にその事実だけを伝えた。怒ることも…

#チープな戦闘描写を自己流にアレンジ選手権

「けっ、その程度かい」 巨大な肉包丁をだるそうに下げ、『悪食の王』はシャープナーを忌々しげに壁に打ち付けて、俺の方を睨みつける。 剣の技も糞もない、只々力任せに肉包丁を二撃、三撃と打ち据えてくる。それを避け、捌き、隙を見て『悪食の王』の肥満…

シャトルコック

呼び鈴を押してからしばらくすると、階段を転げ落ちてくるような足音と共に玄関が開いて、千鶴が顔を出した。その時はニコニコとしていたくせに、来客が僕だと分かった途端、つまらなそうな顔になってしまった。 「これ、お前の母ちゃんに頼まれたやつだって…

チラシの裏の呟き その2

カラオケで歌う歌には2種類ある。 練習研鑽を重ねて上達を目指す歌。 自己満足上等、点数その他一切無視で歌う歌。 みんな違って、みんないい。