3. Patriot

「ああそうだよ。俺がやった。間違いない。でもなあ警部さん、それに何の問題があるんだ? あいつら違法移民はこの街にやってきて、俺たちの仕事を奪っていった。通りにどれだけ仕事にあぶれた連中がいるか、警部さんだってわかってるんだろう?

「警部さん、俺の親父はね、あいつらに仕事を奪われたようなもんだったんだよ。大して蓄えもないまま仕事をクビになって、学が無いから就けそうな仕事だって限られててな。その仕事だって奴ら移民が安い賃金でも文句言わずにやっちまう。そうすりゃ雇う方だって安い賃金しか出さなくなるさ。

「親父の歳も歳だ、そう仕事もあるわけじゃない、あっても安い賃金だ。そんな中で、親父は死んでいったよ。

「だからね、俺は親父から仕事を、人生を奪っていった違法移民が大っ嫌いなんだよ。この国から一人もいなくなってしまえばいいと思っているんだよ。それで、この間の暴動のときにあいつを殴りつけてやった。俺たちに囲まれておろおろしてやがったからな、あいつらの立場、ってのを分からせてやろうと思ったんだよ」

 

― 彼はな。亡くなったよ。君は晴れて”殺人犯”に格上げだ。

 

「そうか、死んだのか。でもあれだ、これで仕事にあぶれている誰かがやつの仕事にありつけるんじゃないのか。そうだろ? 警部さん」

 

―これはお前の部屋から出てきたものだ。この写真に見覚えは?

 

「ああ、もうずいぶん昔に旅行をした時のものだな。この時はまだ、俺たちの国も、奴らの国もこんな深刻なことになっちゃいなかったな。もっとも、ただ気付いていないだけだったかもしれないけどな」

 

―ここに写っている少年、彼はお前の友達か?

 

「ここの街で知り合った子だ。いろんな話をしたのは覚えているな。料理人になりたい、って言ってたかな。ただ、それだけだよ。俺はもう次の日にはバスに乗って次の街へ向かった。警部さん、なんでそんな世間話をするんだ?」

 

―お前が ”殺した”彼、な。難民として正式にこの国に来ていたんだよ。違法なんかじゃない。ここに入国当時の調書がある。お前も知ってるだろう? テイラー上院議員が移民局にいたころに担当した少年だった。

―彼は雇われて仕事をしていたんじゃない。彼の国の料理を、屋台で出していた。ささやかだけど、自分で居場所を見つけていた。お前たちの仕事なんか奪っちゃいなかったんだよ。

 

「でも、奴らは! 移民共は!」

 

―『子羊の肉と香辛料、刻んだタマネギ。一掴みのレーズン。ほんの少しの塩。あとは、サフラン。これだけは忘れちゃダメなんだ』……聞き覚えはないか? きっとお前は知っているはずだ。

 

「……」

 

―もう意識も定かでないときにな、彼がずっとうわ言のように言っていた。テイラー上院議員がな、これを聞いたときに、人目も憚らずに泣いていたよ。

 

「知っている。俺はその言葉を知っている。

 まさか。……教えてくれ、まさか俺は! 俺が殺しちまった彼は!」

 

―ああ、カマルだ。

 

彼の名は、カマルだ。