波止場の決闘
「いいか、お互い恨みっこなしだ」
「勿論だ。生き残った方がシマをすべて貰う」
「ああ、あの世で泣き言いうんじゃねぇぞ」
「こっちの台詞だ、マヌケ」
この二人のボスは、古式ゆかしい決闘に、この島の利権を委ねることにした。
島の西側を治める、でっぷりとしたボスと、島の東側を纏める、痩せぎすのボス。この二人が今、波止場で相対している。
立会人は、互いに信用のおける者を一人づつ。二人のボスは古式ゆかしく背中合わせに立った。
「それでは、我々が十を数えたら振り向いて。よろしいですね」
立会人が告げる。
一、二、三……。二人のボスは歩を進める。
四、五、六……。西側のボスの顔面から脂汗が滴る。
七、八、九……。東側のボスの手が震える。
十!
ボス同士が年相応にゆったりと振り向き、やはりゆっくりと懐から銃を抜く。
それより早く、互いの立会人も懐から銃を取り出し、互いのボスに銃口を向け躊躇なく引き金を引き絞る。弾は違わず互いのボスの命を絶った。
そして立会人同士、未だ硝煙の燻る銃口を互いの眉間に突きつける。
「……だよな、お前のところもそうだよな」
「ああ、今はこんなちんけな争いしてる場合じゃない、って言っても聞きやしない」
「その隙を狙って、他から付け込まれるのがオチなんだがな」
「で、どうする? 引くのかい」
永遠とも思える数秒ののち、二人は銃を下し、抱擁をした。
了